ユッタ・フォン・メクレンブルク＝シュトレーリッツ

ユッタ・フォン・メクレンブルク＝シュトレーリッツ：激動の時代を生きた妃

ユッタ・フォン・メクレンブルク＝シュトレーリッツ（1880年1月24日 - 1946年2月17日）は、モンテネグロ王太子ダニーロの妃として歴史に名を残しました。彼女は、ドイツのメクレンブルク＝シュトレーリッツ大公アドルフ・フリードリヒ5世の娘として生まれ、アウグステ・シャルロッテ・ユッタ・アレクサンドラ・ゲオルギーネ・アドルフィーネという長い名前を持っていました。

生い立ちと結婚

ユッタは、姉マリーと同様に、両親との接触が少なく、乳母と家庭教師によって育てられました。彼女の人生が大きく変わったのは、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の政略によって、モンテネグロ王太子ダニーロとの婚約が整えられたことでした。この結婚は、モンテネグロとドイツの関係を強化する目的がありました。

結婚に際し、ユッタは正教に改宗し、ミリツァというモンテネグロ名を与えられました。彼女がバールに到着した際、未来の義弟となるイタリア王子ヴィットーリオ・エマヌエーレ（後のヴィットーリオ・エマヌエーレ3世）が彼女を首都ツェティニェまで案内しました。1899年、ユッタはダニーロと結婚しましたが、夫妻には子供が恵まれませんでした。

第一次世界大戦と亡命

第一次世界大戦が勃発すると、モンテネグロはユッタの故国であるドイツを含む中央同盟国側と戦うことになりました。ドイツ出身の妃がいるにもかかわらず、オーストリア軍はバールにあるユッタの別荘を標的に爆撃しました。この事実は、彼女が置かれた複雑な立場を物語っています。

戦後、モンテネグロはセルブ＝クロアート＝スロヴェーヌ王国に併合され、王家はフランスに亡命政府を樹立しました。1921年3月、義父であるニコラ1世が亡くなると、夫ダニーロが王位を継承しましたが、わずか1週間後には甥のミハイロ（ダニーロの弟ミルコ王子の息子）に譲位しました。

その後

夫妻は主にフランスで生活し、1939年にダニーロが亡くなると、ユッタは義弟ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世の庇護を受け、イタリアで余生を送りました。彼女は、激動の時代を生き抜き、政略結婚、戦争、亡命といった様々な経験をした女性でした。

ユッタの生涯は、20世紀初頭のヨーロッパの政治情勢と、王族の運命がどのように翻弄されたかを物語る一例と言えるでしょう。彼女の物語は、歴史の陰に隠れた女性たちの人生に光を当てるものであり、私たちが歴史を多角的に理解する上で貴重な情報源となります。

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