ユリア・ソーンツェワ

ユーリア・イッポリトヴナ・ソーンツェワ：ソ連映画界の巨匠

ユーリア・イッポリトヴナ・ソーンツェワ (1901年8月7日-1989年10月28日) は、ソビエト連邦を代表する映画監督、脚本家、プロデューサー、そして女優でした。革命前のロシア帝国モスクワに生まれ、多岐にわたる才能でソ連映画史に大きな足跡を残した彼女の生涯と作品を紐解いていきます。


女優としての華々しいデビューと、巨匠との出会い


1924年、ヤーコフ・プロタザーノフ監督のSF映画『アエリータ』で、主人公である火星の女王アエリータ役を演じ、鮮烈な女優デビューを果たします。この作品は、ソ連初期のサイレント映画の中でも傑作として名高く、ソーンツェワの演技は高く評価されました。その後、ウクライナ出身の著名な映画監督、アレクサンドル・ドヴジェンコと結婚。ドヴジェンコの監督作品に数多く出演し、彼の芸術性に触れながら、自身の映画への深い理解を培っていきます。


共同監督としての時代と国際的な評価


1939年からは、夫であるドヴジェンコと共同で映画製作を始めます。共同監督として、ウクライナの歴史や文化を描いた作品を制作し、ソ連映画界に大きな影響を与えました。1949年には、ドヴジェンコ監督の『ミチューリン』がスターリン国家賞を受賞、ソーンツェワもその栄誉に浴しました。ドヴジェンコの死後も、ソーンツェワは自身の才能を存分に発揮し、独創的な作品を世に送り出し続けます。


1961年、監督作品『戦場』が第14回カンヌ国際映画祭に出品され、監督賞と技術大賞特別賞を受賞。国際的な評価を確立します。続く1964年の監督作品『魅せられたデスナ河』はフランスでも公開され、フランスの著名な映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』でジャン＝リュック・ゴダールによってベストワンに選出されるなど、高い評価を受けました。1975年には、第28回カンヌ国際映画祭の審査員を務めるなど、その功績は国際的に認められました。


晩年と功績


1979年、78歳で監督作品『三次元における世界』を発表、その後引退しました。80歳を迎える頃には、ソ連人民芸術家の称号を受け、その功績を称えられました。1989年、88歳でその生涯を閉じます。


ソーンツェワは、女優として華々しいデビューを飾り、その後、夫であるドヴジェンコとの共同監督、そして独立した監督として、数々の傑作を生み出しました。彼女の作品は、ソ連の社会主義リアリズムの枠を超え、独自の芸術性を持ち、国際的な評価も得ました。ソーンツェワは、ソ連映画史において重要な役割を果たしただけでなく、現代映画にも大きな影響を与え続けている、まさに巨匠と言えるでしょう。彼女の作品群は、今もなお世界中の映画ファンを魅了し続けています。


主なフィルモグラフィ


『アエリータ』(1924年) - 出演
『大地』(1930年) - 出演
『イワン』(1932年) - 出演
『シチョールス』(1939年) - 共同監督
『フレームの中のウクライナ』(1943年) - 共同監督
『ミチューリン』(1948年) - 出演
『戦場』(1961年) - 監督
『魅せられたデスナ河』(1964年) - 監督
* 『三次元における世界』(1979年) - 監督


ソーンツェワの生涯と作品は、ソ連映画史、ひいては世界映画史において重要な位置を占めており、これからも研究と考察が続けられるでしょう。

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