ユリウス・ハインリヒ (ザクセン＝ラウエンブルク公)

ユリウス・ハインリヒ：ザクセン＝ラウエンブルク公、激動の時代を生き抜いた武人

ユリウス・ハインリヒ（1586年4月9日 - 1665年11月20日）は、17世紀のヨーロッパにおいて、ザクセン＝ラウエンブルク公として、また帝国軍の陸軍元帥として名を残した人物です。彼の生涯は、宗教改革後のヨーロッパにおける権力闘争と、三十年戦争という未曾有の戦乱の中で、複雑に絡み合っています。

生い立ちと軍歴

ユリウス・ハインリヒは、ザクセン＝ラウエンブルク公フランツ2世と、ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュテル公ユリウスの娘マリアの間に生まれました。テュービンゲン大学で学んだ後、スウェーデン王グスタフ2世アドルフに仕え、軍事的な才能を開花させます。若い頃には、オスナブリュック司教への任命を期待してカトリックに改宗したという逸話も残っています。

皇帝フェルディナント2世に仕えたユリウス・ハインリヒは、1617年のウスコク戦争で連隊を指揮し、その後ハンガリーでも同様の任務に就きました。白山の戦いにも参戦し、皇帝の侍従として、デンマークおよびノルウェー王クリスチャン4世への使者も務めています。1619年には、受胎騎士団を創設し、教皇の承認を得るなど、多岐にわたる活動を展開しました。

シュラッケンヴェルト領主とヴァレンシュタイン事件

1623年、ユリウス・ハインリヒは、白山の戦いで敗北したシュリック家から剥奪されたシュラッケンヴェルト（現在のオストロフ）の領主権を与えられます。彼は、シュリック家の旧宮殿の隣に「白宮殿」を建設し、ここを拠点として領地を統治しました。

1629年には、ポーランド帝国軍の最高指揮官に任命され、ザクセン選帝侯ヨハン・ゲオルク1世との和平交渉にも尽力しました。しかし、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインとの親交が、彼の運命を大きく狂わせます。ヴァレンシュタインが皇帝に対する陰謀に関与していると疑われた際、ユリウス・ハインリヒも逮捕され、ウィーンで投獄されてしまいます。

彼は、帝国法務委員会の権限を否定し、帝国直属の諸侯として、同じ帝国諸侯によってのみ裁かれるべきだと主張しました。1635年のプラハ条約後、フェルディナント2世は彼を釈放し、1637年に皇帝フェルディナント3世が即位すると、再び外交使節の任務を与えられました。

ザクセン＝ラウエンブルク公として

1656年、ユリウス・ハインリヒは異母兄アウグストの跡を継ぎ、ザクセン＝ラウエンブルク公となります。彼は、貴族の特権と等族国家を確認し、1658年には家臣に対し領地の質入れや譲渡を禁じました。また、ザクセン＝ラウエンブルクの荘園領主がハンブルクやリューベックといった都市国家の経済圏に加わることに抵抗し、両都市国家との間で対立を引き起こしました。

1659年、ユリウス・ハインリヒは「森林をニーダーザクセンの中心および財源として尊重する」と布告し、領内の森林資源の保護に努めました。また、ヨハン・クンケルを公爵家の薬局長に任命するなど、文化的な側面にも貢献しています。

1663年には、ハウエンシュタイン（ボヘミア）の城をシュリック家から購入し、公領の一部としました。ユリウス・ハインリヒは1665年にプラハで老衰のため亡くなり、シュラッケンヴェルトに埋葬されました。

結婚と家族

ユリウス・ハインリヒは生涯で3度結婚し、多くの子女をもうけました。最初の結婚では子供はできませんでしたが、2番目の妻との間に生まれたフランツ・エルトマンは、後にザクセン＝ラウエンブルク公を継承しました。3番目の妻との間にも、マリア・ベニグナ・フランツィスカやユリウス・フランツといった子供たちが生まれました。

ユリウス・ハインリヒは、軍人、外交官、そして領主として、激動の17世紀を生き抜いた人物です。彼の生涯は、当時のヨーロッパ社会における権力闘争、宗教対立、そして戦争の悲劇を色濃く反映しています。

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