ユリス・ハルトマニス

ユリス・ハルトマニス

ユリス・ハルトマニス（Juris Hartmanis）は1928年7月5日にラトビアのリガで生まれ、2022年7月29日に逝去した著名な計算機科学者です。彼は計算理論を専門とし、その分野での重要な仕事によって広く知られています。特に、1993年にリチャード・スターンズとともに受賞したチューリング賞は、計算複雑性理論の確立に対する彼の貢献を称えるものでした。

経歴

ハルトマニスの人生は、戦争や占領によって大きく影響を受けました。彼の父はラトビア陸軍の将軍であり、1940年にソビエト連邦軍がラトビアを占領した際、父は捕らえられ獄死しました。こうした事情から、ハルトマニスは母と兄弟とともにラトビアを脱出し、最初にドイツに移り住むこととなります。そこでマールブルク大学にて物理学を学びました。

その後、アメリカ合衆国に移住し、カンザスシティ大学で1951年に応用数学の修士号を取得しました。さらにカリフォルニア工科大学で数学を学び、1955年にはロバート・P・ディルワースの指導のもとで博士号を取得しました。彼の功績が認められ、1999年にはミズーリ大学カンザスシティ校より名誉博士号が授与されました。

研究と業績

ハルトマニスは、コーネル大学とオハイオ州立大学で講師として教鞭を執った後、1958年にゼネラル・エレクトリックの研究所に勤務し、計算機科学の理論的研究を進めました。1965年にはコーネル大学の教授に就任し、計算機科学部門の設立に尽力し、最初の学科長としてその発展を助けました。

彼の研究の中で特に注目されるのは、リチャード・スターンズとの共同研究による論文です。この論文では、時間複雑性クラス TIME (f(n)) を紹介し、時間階層定理を証明しました。この業績により、計算複雑性理論の基盤を築く礎となりました。さらに、レナード・ベルマンとの共著による1977年の論文では、全てのNP完全言語が多項式時間同型であることを示唆する「ベルマン-ハルトマニス予想」を提起しましたが、この予想の証明は現在も未解決のままです。

ハルトマニスはまた、Association for Computing Machinery（ACM）のフェローや全米技術アカデミーの会員に選ばれ、その功績と専門性は評価されています。彼の研究は、計算機科学における基盤理論を理解する上で欠かせないものであり、現代の計算機科学の発展に大きな影響を与えています。ハルトマニスの足跡は今後も多くの研究者にとっての指針となるでしょう。

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