ユリョ・アウクスティ・ワリン

ユリョ・アウクスティ・ワリンについて

ユリョ・アウクスティ・ワリン（Yrjö Aukusti Wallin、1811年10月24日 - 1852年10月23日）は、フィンランドが誇るオリエンタリスト、探検家、そして教授であり、特に1840年代に行った中東の探査によって広く知られています。彼は英語圏ではジョージ・オーガスト・ウォリン（George August Wallin）、ドイツ語圏ではゲオルク・アウグスト・ヴァリン（Georg August Wallin）、アラビア語圏ではアブド・アル＝ワリ（Abd al-Wali）として知られています。

生い立ちと学問的背景

ワリンは1811年、バルト海に位置するオーランド諸島の首府スンドで生まれました。1829年にヘルシンキ大学に入学し、東洋言語学を専攻。1836年、彼は修士号（M.A.）を取得しました。その後、大学図書館で司書として勤務しながら、アラビア語やペルシア語に関する博士論文を執筆しました。特に1839年にはサンクトペテルブルクに赴き、名高い学者シェイク・ムハンマド・アイイド・アル＝タンターウィーと出会い、彼の中東に関する知見を深めました。

中東での旅とその影響

ワリンの中東への初めての訪問は1843年で、この旅から様々な文化や宗教に対する理解が深まりました。彼は現地の人々とのより深い交流を求め、自らをムスリムと偽り「アブド・アル＝ワリ」と名乗りました。この行為は多くの人々に誤解を招き、彼がイスラム教に改宗したのではないかという憶測も生まれましたが、彼の書簡や日記からはそんな証拠は見つかっていません。

1845年、ワリンはメッカを訪れました。これは、イスラム教徒以外立ち入りを許されていない場所において、彼の探検への強い探求心を示しています。さらに1846年から1848年にかけてはパレスチナやペルシアの地を訪れ、そこでも彼の異文化交流は続きました。この時期に何らかの形でイスラム教に対する疑念が見られるものの、彼の宗教に関する立場は不透明です。

ヨーロッパへの帰還と晩年

1850年にヨーロッパに戻ったワリンは、イギリスの王立地理学会から『Notes taken during a Journey through part of Northern Arabia』という著作を発表しました。翌年には博士論文を完成させ、ヘルシンキ大学で東洋言語学の教授として迎えられました。彼が行った調査の独自性は高く評価され、1851年には王立地理学会から金メダルが授与されました。

重要な学術的な業績がありながらも、健康上の理由から彼は再度中東に行く機会を逃しました。彼の著作にはヨーロッパ文化への批判的な視点が見受けられ、「もはや自分は、ヨーロッパに馴染みきることはできない」との声も残されています。残念ながらワリンは帰国からわずか3年後、41歳の誕生日の前日である1852年10月23日に逝去しました。

彼の遺産と記念碑

ワリンの人生と業績はフィンランドの文化遺産に大きな足跡を残しました。彼の墓がヒエタニエミ墓地にあり、アラビア語の名が刻まれた石碑は、彼の探求心と異文化理解に対する情熱を物語っています。彼の名は今も多くの人々の中で語り継がれ、彼の業績は後世のオリエンタリストたちに影響を与え続けています。

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