ユルゲン・ヒンツペーター

ユルゲン・ヒンツペーター - 光州事件を伝えたジャーナリスト

ユルゲン・ヒンツペーター（Jürgen Hinzpeter）は、1937年に生まれたドイツのジャーナリストで、韓国で発生した光州事件を特に伝えたことで知られています。彼はドイツ公共放送連盟（ARD）の記者として活躍し、特に1980年に起きた光州での虐殺を撮影した唯一の報道関係者として歴史に名を刻みました。彼の映像は、ドイツに届いた後、世界中に放送され、事件への国際的な関心を高める一因となりました。

経歴とキャリアの変遷

ヒンツペーターは、もともとは医師を目指していましたが、1963年にジャーナリズムの道を選び、ARDのハンブルク支局でテレビカメラマンとしてキャリアをスタートさせます。その後、1967年には東アジア唯一のARD支社がある香港に赴任し、ベトナム戦争の報道に従事しました。彼はその後、東京支社に移り、約17年間にわたり特派員としての仕事を続けました。

光州事件以前にも、韓国を訪れており、朴正煕政権下の様々な 사건を報道しました。特に、5月18日の民主蜂起の直前に自宅軟禁されていた金泳三へのインタビューは、彼の活動の中でも重要なものでした。

光州事件の報道

1980年5月、光州での民主化運動が高まる中、ヒンツペーターは、東アジア・ドイツミッションの牧師ポール・シュナイスの協力を得て、光州に潜入します。彼は若者たちが警棒で殴られる様子や、道庁に横たわる遺体の姿を撮影し、それを10本のフィルムに収めました。彼は、浜がにしたフィルムを空港で没収されないように隠し、脱出して日本へ向かいました。

脱出後、彼は5月23日に光州に戻り、戒厳軍撤退後の市民自治の様子と、再び打ち砕かれる政治改革への希望を目撃します。ヒンツペーターの映像は、ARDを通じて多くの国に伝えられ、9月にはドキュメンタリー『岐路に立つ韓国』として放送されました。これにより、光州民主化運動に関する貴重な記録が世界に広まりました。

受賞と評価

ヒンツペーターは、2003年に韓国の民主化運動への貢献が評価され、韓国ジャーナリスト協会から宋建鎬言論賞を受賞しました。また、2005年には韓国放送カメラジャーナリスト協会から特別賞が授与されています。彼の報道は、光州事件の真実を明らかにする上で非常に重要でした。

晩年と死

2004年、慢性心臓病が原因で一時的に危険な状態に陥ったヒンツペーターは、死後光州に埋葬されることを望んでいました。彼はその後、健康を取り戻し、民主蜂起の第25回記念式典にも出席しました。しかし、2016年にリューベック大学で逝去しました。彼の遺族の意向もあり、彼は光州に埋葬されることは叶いませんでしたが、彼自身の遺髪と遺爪を納めた記念墓石が光州に設置されています。

ヒンツペーターは、光州を通じて韓国の民主化運動の象徴的な存在となり、その報道は現在でも多くの人々に影響を与え続けています。彼の勇気ある行動と真実を求める姿勢は、多くの人々に感動を与えることとなりました。

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