ユーニス・ゲイソン

ユーニス・ゲイソンは、1928年3月17日にイギリスに生まれ、2018年6月8日に90歳でその生涯を終えた、イングランド出身の女優です。本名はユーニス・サーゲイソン。彼女は、特にスパイ映画の金字塔『007』シリーズの黎明期において、重要な役を演じたことで広く知られています。

幼少期から学生時代にかけて、彼女はイングランド南東部のクロイドンで生を受けた後、ストレータム、パーリー、さらにはスコットランドのグラスゴーやエディンバラと、いくつかの土地で暮らしました。特にエディンバラでは、歴史あるエディンバラ・アカデミーで学び、オペラなどの芸術に触れる機会を得ました。この学生時代の経験が、後に彼女が表現の世界に進む上での素養を育んだと言えるでしょう。

女優としてのキャリアは、1948年に公開された映画『偽れる結婚』（My Brother Jonathan）でスタートしました。これがスクリーンデビュー作となり、彼女の俳優人生の幕が開きました。その後も、彼女は着実にキャリアを重ね、『優雅な人々』（To Have and to Hold, 1951）、『熱砂の舞』（Zarak, 1956）、そして怪奇映画『フランケンシュタインの復讐』（The Revenge of Frankenstein, 1958）といった、多岐にわたるジャンルの作品に出演しました。

しかし、ユーニス・ゲイソンの名前が世界中に知れ渡る決定的な契機となったのは、イアン・フレミングの小説を映画化した「007」シリーズへの出演です。1962年に製作されたシリーズ第1作『007 ドクター・ノオ』（日本では『007は殺しの番号』のタイトルでも公開）と、翌1963年の第2作『007 ロシアより愛をこめて』において、彼女はジェームズ・ボンド（演：ショーン・コネリー）のガールフレンドであるシルヴィア・トレンチを演じました。シルヴィア・トレンチは、シリーズを通して描かれることになるボンドの恋愛対象、「ボンドガール」の初期の重要なキャラクターであり、彼女は広義において「初代ボンドガール」の一人として位置づけられています。『ドクター・ノオ』でのカジノのシーン、ボンドが有名な自己紹介をする際にシルヴィア・トレンチが隣にいる場面は、特に映画史に残る瞬間として語り継がれています。

映画以外では、テレビドラマにもゲストとして出演しました。たとえば、後に自身もジェームズ・ボンド役を務めることになるロジャー・ムーアが主演した人気シリーズ『セイント 天国野郎』（The Saint）などで、多様な役柄を演じました。

長年のキャリアを経て、ユーニス・ゲイソンは2018年春に90歳で亡くなりました。彼女は、多才な英国女優として多くの作品に出演しましたが、中でも『007』シリーズの黎明期において、ジェームズ・ボンド最初のスクリーン上のパートナーの一人を演じた功績は大きく、映画史における「ボンドガール」の系譜を語る上で欠かせない存在です。

主な出演作品：

『偽れる結婚』 My Brother Jonathan （1948年）
『優雅な人々』 To Have and to Hold （1951年）
『熱砂の舞』 Zarak （1956年）
『フランケンシュタインの復讐』 The Revenge of Frankenstein （1958年）
『007 ドクター・ノオ』 Dr. No （1962年）
『007 ロシアより愛をこめて』 From Russia with Love （1963年）

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