ユーリコ・ダシルヴァ

ユーリコ・ダシルヴァ：カナダ競馬史に名を刻んだブラジル出身の騎手

ユーリコ・ダシルヴァは、カナダ競馬界を代表する名騎手として知られています。1975年、ブラジルのサンパウロ州で生まれた彼は、幼い頃にテレビで見た競馬に魅せられ、12歳で家を出る決意をします。そして、クォーターホースのレースに騎乗するため、ひたむきに夢を追いかけました。

16歳でサンパウロの競馬学校に入学。70名もの応募者の中からわずか6名という狭き門を突破し、同期生で唯一騎手としてデビューを果たします。デビュー当初は騎乗依頼が少なく苦戦しましたが、気性難で他の騎手が乗りたがらない馬にも果敢に挑戦。その努力が実り、フランスボーストという馬とのコンビで頭角を現し、名門ダービーパウリスタ大賞で勝利を収めます。ブラジルでの成功を収めた後、マカオを経て、2004年にカナダのウッドバイン競馬場を拠点に活動を始めました。

カナダでの活躍は目覚ましく、2008年には年間100勝を突破。翌年にはカナダダービーに相当するクイーンズプレートを制覇し、2010年には同レースを連覇するなど、190勝を挙げてリーディングジョッキーの座に輝きます。その後もリーディング争いを続け、2013年には国際G1レースであるノーザンダンサーターフステークスやアメリカのGIレースであるアルシバイアディーズステークスを制覇するなど、輝かしい実績を残しました。2015年と2016年には2年連続で200勝以上を挙げ、特に2016年には2位の騎手に62勝もの大差をつける圧勝でリーディングジョッキーに輝きました。

カナダでの騎手生活を通して、数々の栄誉を手にする一方で、2014年には日本でも騎乗経験があります。ジャパンカップに参戦したものの、結果は16着という悔しい結果に終わりました。しかし、2017年にはワールドオールスタージョッキーズ（WASJ）に参戦。最終レースで勝利を収め、個人戦で王者に輝きました。このWASJへの参加は、自身の憧れであった武豊騎手と騎乗できることを条件に招待を受け入れた結果でした。

2019年シーズン終了後、通算2286勝という輝かしい戦績を残し、引退を表明。カナダ競馬における最高の栄誉であるソヴリン賞を7度も受賞するなど、カナダ競馬界に多大な貢献をしました。その功績が認められ、2022年にはカナダ競馬殿堂入りを果たしました。

ダシルヴァの情熱は、競馬界にとどまりません。彼は長年、賞金の一部を引退した競走馬のケアのために寄付してきました。その活動のきっかけは、かつて彼が騎乗していた若駒が重傷を負った際に、その馬の命を救ってくれた女性獣医師との出会いです。その女性は、現在ダシルヴァの妻となっています。また、2020年には自らの自伝を発表するなど、引退後も精力的に活動しています。

主な勝ち鞍としては、北米ではノーザンダンサーターフステークス、カナディアンインターナショナルステークス、ウッドバインマイル、アルシバイアディーズステークス、クイーンズプレート、ブリーダーズステークスなど、数々のG1レースを制覇。その他、ダービーパウリスタ大賞などブラジルでの勝利も記憶に残るものです。彼の類まれな騎乗技術と、馬への深い愛情、そして強い意志が、数々の偉業を達成した原動力だったと言えるでしょう。ユーリコ・ダシルヴァの物語は、夢を追い続けることの大切さを教えてくれる、感動的な実話です。

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