ユーリー・グリゴローヴィチ

ユーリー・グリゴローヴィチ：20世紀バレエ史に輝く巨匠

ユーリー・ニコラエヴィチ・グリゴローヴィチは、20世紀後半から21世紀初頭にかけて活躍した、ロシアを代表するバレエ振付家です。1927年レニングラードに生まれ、バレエダンサーとしてのキャリアを経て、振付家として類まれな才能を開花させました。彼の革新的な作品群は、世界中のバレエ界に多大な影響を与え、今日でも上演され続けています。

華麗なるキャリアの軌跡

グリゴローヴィチは、レニングラード・バレエ学校（現ワガノワ・バレエ学校）で研鑽を積んだ後、キーロフ・バレエ団（現マリインスキー・バレエ）に入団。若くして才能を認められ、振付家としての活動を開始します。1957年、プロコフィエフ作曲の『石の花』で新たな振付を発表し、大成功を収めました。それまでの伝統的な演出を刷新し、独自の表現方法で高い評価を獲得したのです。この作品は、彼の代表作として、現在も上演されています。

その後、キーロフ・バレエ団のバレエマスターを経て、1964年にボリショイ・バレエ団に移籍。30年以上にわたり、ボリショイを率いる中心人物として活躍しました。1988年には芸術監督に就任しますが、1995年に一部関係者との対立により退任。その後も、モスクワ国際バレエコンクール審査委員長などを務め、2008年には再びボリショイ・バレエ団のバレエマスターとして復帰しました。長年にわたるバレエ界への貢献は、まさに比類のないものです。

グリゴローヴィチ・スタイル：舞踊表現の革新

グリゴローヴィチの振付の特徴は、従来のバレエ作品に見られたマイムを極力排除し、舞踊そのものの表現力を最大限に追求している点にあります。ソリストの演技的な表現力と、大規模な群舞によるダイナミックな演出は、観客を圧倒的なスケール感の世界へと誘います。彼は、男性ダンサーの表現力を新たな次元へと高め、単なる女性の支え手としての役割から解放しました。男性主体の力強い作品は、彼の創作における大きな特徴の一つと言えるでしょう。

また、ミハイル・フォーキン、マリウス・プティパ、レフ・イワノフといった巨匠たちの古典作品を、現代的な解釈で再構築し、新たな魅力を引き出しました。彼の作品には、古典バレエへの深い理解と、革新的な発想が融合しています。

代表作：時代を超えて愛される名作の数々

グリゴローヴィチは、数々のオリジナル作品と、古典作品の新演出を手掛けました。その代表作として挙げられるのは、以下の通りです。

オリジナル作品:

『石の花』（1957年）：プロコフィエフの音楽にのせて、力強い表現と美しい舞踊が見事に融合した傑作です。
『愛の伝説』（1961年）：メリニコフの音楽による、ロマンティックでドラマチックな作品です。
『スパルタクス』（1968年）：ハチャトゥリアンの音楽による、壮大な歴史劇をバレエで表現した力作です。
『イワン雷帝』（1975年）：プロコフィエフの音楽による、ロシアの歴史を背景にしたドラマチックな作品です。
『ロミオとジュリエット』（1979年）：プロコフィエフの音楽による、誰もが知るシェイクスピアの悲劇を、バレエの表現力で鮮やかに描いた作品です。

改変・新演出:

『くるみ割り人形』（1966年）
『白鳥の湖』（1969年）
『眠れる森の美女』（1965年、1973年）
* 『ライモンダ』（1984年）

これらの作品は、いずれも高い芸術性とエンターテイメント性を兼ね備えており、今日でも世界中で愛され、上演されています。

ボリショイの黄金時代を築いた巨匠

ユーリー・グリゴローヴィチは、ボリショイ・バレエ団の黄金時代を築き上げた、まさに伝説的な人物です。彼の革新的な振付と、バレエに対する情熱は、多くのダンサーや観客の心に深い感動を与え続けました。彼の功績は、20世紀バレエ史に燦然と輝く金字塔として、これからも後世に語り継がれていくでしょう。彼の妻は、ボリショイを代表する名バレリーナ、ナタリア・ベスメルトノワでした。

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