白鳥の湖

『白鳥の湖』の概要

『白鳥の湖』（はくちょうのみずうみ）は、ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーが1875年に作曲したバレエ音楽です。この作品は、彼が初めて発表したバレエ音楽であり、後に大ヒットとなり、今ではクラシック・バレエを代表する作品の一つとされています。また、チャイコフスキーの作品としては『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』と共に、「3大バレエ」として広く知られています。

本作は、悪魔の呪いによって白鳥の姿に変えられた王女オデットと彼女を愛する王子ジークフリートの悲しい恋物語を描いています。最初の上演は1877年にモスクワのボリショイ劇場で行われましたが、当時はあまり評判が良くありませんでした。しかし、チャイコフスキーの死後に振付家のマリウス・プティパとレフ・イワノフによって改訂され、1895年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で再演されると、瞬く間に成功を収めることとなりました。今では上演されるほとんどがこの改訂版を基にしています。

創作の背景

1875年春、チャイコフスキーはボリショイ劇場からバレエ音楽の依頼を受けました。当時、バレエ音楽はオペラや交響曲と比較して芸術的価値が低いとされていましたが、チャイコフスキーは以前からバレエ音楽に興味を持っていました。そのため、作曲を引き受けた理由の一つに金銭的な理由とともに自己表現の一環としての思いがあったとされています。

作曲の過程は詳細には不詳ですが、台本はボリショイ劇場の管理部長ウラジミール・ベギチェフとダンサーのワシリー・ゲリツェルによって作成されたと考えられています。チャイコフスキーは作曲に際して振付家ウェンツェル・レイジンゲルと打ち合わせをしたこともあったようです。

初演とその評価

1877年3月4日、ボリショイ劇場でレイジンゲル振付による4幕の『白鳥の湖』が初めて上演されました。主役のオデットを演じたのはペラゲーヤ・カルパコワとアンナ・ソベシチャンスカヤのダブルキャストでしたが、当時の公演は様々な問題により、観客からの評判は芳しくありませんでした。振付や舞台美術、演者などの水準が低かったこと、難解な楽曲の理解が得られなかったことが原因と言われています。

その後、この初演版は41回の上演を経て1883年にレパートリーから外されましたが、観客の評価が完全に悪かったわけではなく、一定の人気を集めていたことも事実です。

蘇演と新しい版

1890年代初頭、サンクトペテルブルクにあるマリインスキー劇場はチャイコフスキーの作品の再演を模索していましたが、1893年に彼が急逝すると改訂作業が急がれました。モデスト・チャイコフスキーの手による大幅な台本の改訂や、新しい振付が行われ、1895年には改訂版が全幕蘇演されることとなりました。この版は非常に好評を博し、以後の上演にも多くの影響を与えることになります。

物語と主な登場人物

物語は、白鳥に姿を変えられてしまった王女オデットと、彼女を愛する王子ジークフリートの悲恋を中心に描かれます。ロットバルトという悪魔が、おしゃれで妖艶な姿のオディールを操り、王子を欺くことで物語は展開していきます。オデットの逃れられない運命と、彼女を愛する王子の苦悩が二人の間で織りなされる感情の深さが、本作品の魅力の一つです。

• - オデット：王女であり白鳥の呪いをかけられた
• - ジークフリート：オデットを愛する王子
• - ロットバルト：オデットに呪いをかけた悪魔
• - オディール：ロットバルトの娘であり王子を欺く役

『白鳥の湖』の影響

『白鳥の湖』はその特異なストーリーと美しい音楽、そして圧倒的なダンス技術により、世界中で数多くの改訂版や新演出が生まれ続けています。特に主演バレリーナが白鳥と悪魔のキャラクターを演じ分ける技術は、舞台芸術における高い技術を示すものとして高く評価されています。また、この作品は何世代にもわたってバレエ団やダンサーに影響を与えてきた不朽の名作です。

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