ユーリー・ドロズドフ

ユーリー・ドロズドフ

ユーリー・イワノビッチ・ドロズドフ（Юрий Иванович Дроздов、1925年9月19日 - 2017年6月21日）は、ソビエト連邦の軍人、チェキスト、そしてスパイとして、その生涯を諜報活動に捧げました。最終階級は退役少将。

生い立ちと軍歴

ドロズドフは、軍人の家庭に生まれ、幼少期から軍事的な環境で育ちました。1944年には、エンゲルス市に疎開していた第1レニングラード砲兵学校を卒業。翌年の1945年には砲兵としてベルリンの戦いに参加し、実戦を経験しました。

KGBへの入局と非合法活動

1956年、ドロズドフは外国語軍事大学を卒業後、ソ連国家保安委員会（KGB）に入局しました。その後、1957年から1963年までの間、彼は「クライネルト」、「ユルゲン・ドリヴス」、「ルドルフ・アベルの従兄弟」など、複数の偽名を使ってドイツで非合法活動に従事しました。この期間中、東西冷戦下で重要な役割を果たしたグリニケ橋でのルドルフ・アベルとフランシス・ゲーリー・パワーズのスパイ交換に立ち会っています。1963年には、作戦要員完全化課程に送られ、更なる訓練を受けました。

海外での活動

1964年から1968年まで、ドロズドフは北京のKGB支局長を務め、その後1970年代初めには、「フォン・ホーエンシュタイン」という名前で西ドイツの連邦情報局（BND）の撹乱工作を行いました。1975年から1979年までは、駐国連ソ連副常任代表という肩書きを隠れ蓑に、ニューヨークのKGB支局長を務めました。

KGB「S」局長とヴィンペル部隊の創設

1979年、ドロズドフはKGBの非合法諜報部門である「S」局長に就任しました。彼は1991年までの12年間この役職を務め、その間、アフガニスタン侵攻時には、「グロム」、「ゼニート」部隊の特殊作戦を指導しました。アフガニスタンでの戦訓をもとに、1981年8月には特殊部隊「ヴィンペル」を創設しました。ヴィンペル部隊は、ソ連崩壊後もロシアの対テロ作戦などで重要な役割を果たしています。

ソ連崩壊後の活動

ソ連末期には、アナリスト、非合法諜報員、外交官といった様々な役割を演じ、対外防諜活動に従事しました。1991年に退役した後、情報分析会社「ナマコン」の社長に就任し、諜報・特殊部隊退役者協会「ヴィンペル-ソユーズ」の名誉総裁も務めています。

受勲歴

ドロズドフは、その功績により、以下の勲章を受章しています。

十月革命勲章
赤旗勲章
労働赤旗勲章
一等祖国戦争勲章
赤星勲章
「名誉国家保安職員」胸章
「諜報における奉仕に対する」胸章

著書

ドロズドフは、自身の経験を基に以下の著作を執筆しました。

「必要な仕事」（Нужная работа）
「ヴィンペルは格別」（Вымысел исключен）
「非合法諜報部長のメモ」（Записки начальника нелегальной разведки）

関連事項

ヴィンペル部隊

外部リンク

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