ユーロビジョン・ソング・コンテスト1993

ユーロビジョン・ソング・コンテスト1993：変化の波と新たな才能

第38回ユーロビジョン・ソング・コンテストは、1993年5月15日にアイルランドのミルストリートにあるグリーン・グレンズ・アリーナで開催されました。人口1500人の小さな町ミルストリートは、コンテスト史上最も小規模な開催地となりました。この大会は、アイルランド放送協会（RTÉ）が制作し、フィオナアーラ・スウィーニーがプレゼンターを務めました。しかし、イギリスのメディアからは、そのアクセスの不便さから「牛小屋」などと揶揄されることもありました。

東欧の変革と予選ラウンドの導入

1991年のソ連崩壊後、東欧諸国が次々と民主化を果たす中で、ユーロビジョンへの参加を希望する国が急増しました。これに対応するため、欧州放送連合（EBU）は参加枠を25に拡大するとともに、旧共産圏からの新規参加国を対象とした予選ラウンド「ミルストリート選手権」を設けることを決定しました。この予選ラウンドは、1993年4月3日にスロベニアのリュブリャナで開催され、7ヶ国が参加し、旧ユーゴスラビアの3ヶ国が見事本選への切符を手にしました。

参加国と放送

アイルランド放送協会（RTÉ1）をはじめとする各国の放送局が参加し、不出場国であるスロバキア・テレビ、ハンガリー・テレビ、ルーマニア・テレビなども中継放送を実施しました。

投票方法

投票方法は従来と変わらず、各国の審査員が気に入った他国の10曲に投票し、お気に入り順に12点、10点、8点から1点を配点。演目終了後、国際電話を通じて各局のスポークスマンが出場順に口頭で発表し、プレゼンターが復唱確認後、スコアボードに加算されました。ただし、マルタは回線の不具合により、投票順が最後となりました。

大会結果とその後

アイルランドが2年連続で優勝を果たし、その音楽史に新たな1ページを刻みました。しかし、ルクセンブルク、トルコ、デンマークなど6ヶ国は、1994年の出場権を失うこととなりました。特にルクセンブルクは、この年を最後にユーロビジョンから姿を消しました。

ボスニア・ヘルツェゴビナ代表は、サラエボ包囲という紛争の最中、命がけで脱出して参加しました。また、ベルギー代表バーバラ・デックスの衣装は、その独特なセンスから、後に「バーバラ・デックス賞」として、ユーロビジョンの歴史における奇妙な瞬間として語り継がれています。

ユーロビジョン・ソング・コンテスト1993は、東欧の政治的変化を背景に、新たな参加国と才能が生まれる一方で、出場権を失う国や、記憶に残る衣装など、様々なドラマが交錯した大会となりました。

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