ユーロビジョン・ソング・コンテスト2009

ユーロビジョン・ソング・コンテスト2009：音楽と政治が交錯したモスクワ大会

2009年5月12日から16日にかけて、ロシアのモスクワにあるオリンピック・スタジアムで開催された第54回ユーロビジョン・ソング・コンテストは、音楽の祭典であると同時に、政治や社会的な問題が浮き彫りになる舞台となりました。

大会の概要

前年のベオグラード大会でロシアのジーマ・ビラーンが優勝したことを受け、ロシアが開催国となりました。当初、モスクワ市長は難色を示しましたが、プーチン首相の意向によりモスクワでの開催が決定。チャンネル1がオリンピック・スタジアムを会場として提案し、欧州放送連合（EBU）に承認されました。

コンテストでは、ノルウェー代表のアリャクサンドル・ルィバークが「Fairytale」を歌い、史上最高得となる387点を獲得して優勝。2位はアイスランド、3位はアゼルバイジャンでした。

投票方式の変更

政治的な影響を受けやすいとされる近隣国同士の投票を是正するため、投票方式が変更されました。決勝では、各国の審査員による投票と電話投票の結果を50%ずつ反映する方式が再導入されました。準決勝は前年までと同様の方式で行われましたが、上位9ヶ国に加えて、審査員が選んだ1ヶ国が決勝に進出することになりました。

ステージデザイン

ニューヨークを拠点とするデザイナー、ジョン・キャシーが手がけたステージは、コンテンポラリー・ロシア・アヴァンギャルドをテーマにしたものでした。多様なLEDスクリーンを駆使し、楽曲に合わせて変化する舞台は、視覚的にも観客を魅了しました。

各国の代表とビデオクリップ

各国の代表が歌う前に流されたビデオクリップでは、2008年のミス・ワールド、クセーニャ・スヒノワが登場し、各国の有名な建造物や名所が紹介されました。また、ロシア語の表現とその英語での意味が表示されるなど、開催国ならではの演出も見られました。

グルジアの参加辞退

グルジア代表として選出されたStefane & 3Gの楽曲「We Don't Wanna Put In」は、歌詞にプーチン首相に関する政治的な暗喩が含まれているとしてEBUから拒否されました。グルジア公共放送は歌詞の変更を拒否し、大会への参加を辞退する事態となりました。

LGBTの抗議

モスクワ市長の同性愛嫌悪的な発言に対する抗議として、ロシアのLGBT活動家ニコライ・アレクセエフは、モスクワでプライド・パレードを開催しようとしましたが、市当局に拒否されました。パレードに参加した人々は逮捕され、ユーロビジョン大会の影で、ロシアにおけるLGBTの人々の権利状況が改めて浮き彫りになりました。

スペインでの放送遅延

スペインの放送局が、テニスの試合を放送するためにユーロビジョン大会の準決勝を遅れて放送したことが問題となりました。このルール違反により、スペインは処罰を受けることになりました。

アルメニアとアゼルバイジャンの対立

アルメニアとアゼルバイジャンの間では、ナゴルノ・カラバフを巡る政治的な対立が、ユーロビジョンの舞台にも持ち込まれました。アルメニアのビデオクリップに映し出された記念碑を巡り、両国間で論争が繰り広げられました。

まとめ

ユーロビジョン・ソング・コンテスト2009は、音楽の祭典であると同時に、政治や社会的な問題が複雑に絡み合った大会となりました。各国の代表によるパフォーマンスやステージ演出に加え、投票方式の変更やグルジアの参加辞退、LGBTの抗議など、様々な出来事が大会を彩りました。音楽を通して文化交流を促進する一方で、政治的な対立や社会的な課題も浮き彫りになる、ユーロビジョン・ソング・コンテストの複雑な側面が垣間見えた大会と言えるでしょう。

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