ヨアキム・トリアー

ヨアキム・トリアー（Joachim Trier）は、1974年3月1日にデンマークのコペンハーゲンで生まれ、現在は主にノルウェーを拠点に活動する、現代ノルウェー映画界を代表する映画監督の一人です。著名な映画監督ラース・フォン・トリアーとは遠縁の関係にあります。

彼の監督としてのキャリアは、2006年に発表された初の長編映画『リプライズ』（原題：Reprise）によって本格的に始まりました。このデビュー作は、ノルウェー国内で権威あるアマンダ賞やAamot Statuetteを獲得するなど高く評価されただけでなく、トロント国際映画祭、イスタンブール国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、ミラノ国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭といった主要な国際映画祭で次々と上映され、世界的にその名を知られるきっかけとなりました。

続く2作目の長編映画『オスロ、8月31日』（原題：Oslo, 31. august）は、2011年の第64回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映されました。この作品は、ノルウェー社会が抱える問題と個人の苦悩を深く掘り下げた人間ドラマとして評価され、第84回アカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表候補の最終3作品の一つに選ばれるに至りました。惜しくも最終ノミネーションには届きませんでしたが、彼の国際的な評価をさらに高める作品となりました。

これら初期の2作品、『リプライズ』と『オスロ、8月31日』は、後に彼の代表的なシリーズとなる「オスロ三部作」の第1作と第2作として位置づけられています。

2015年に公開された第3作目の長編映画『母の残像』（原題：Louder Than Bombs）は、「オスロ三部作」からは外れますが、彼の国際的な活躍を示す作品となりました。この作品は、第68回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に選出されました。翌2016年のアマンダ賞では、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞を含む主要部門で受賞を果たしています。同2016年には、この作品が日本で初めて劇場公開され、日本の映画ファンにも彼の存在が広く知られるようになりました。

そして、2021年に発表された第4作目の長編映画『わたしは最悪。』（原題：The Worst Person in the World）は、「オスロ三部作」の最終章を飾る作品となりました。この作品は世界中で絶賛され、特に第74回カンヌ国際映画祭では、主演を務めたレナーテ・レインスヴェが見事に女優賞を受賞する快挙を達成しました。さらに、第94回アカデミー賞では、トリアー自身が脚本賞と国際長編映画賞の二部門でノミネートされるなど、そのキャリアにおける最高潮の一つと言える成功を収めました。

人間関係やアイデンティティ、現代社会における若者の葛藤などを繊細かつリアルに描き出す作風が特徴であり、ノルウェー映画界のみならず、世界の映画界においてその確固たる地位を築いています。

主な監督作品

リプライズ（Reprise, 2006年）
オスロ、8月31日（Oslo, 31. august, 2011年）
母の残像（Louder Than Bombs, 2015年）
テルマ（Thelma, 2017年）
* わたしは最悪。（The Worst Person in the World, 2021年）

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