ヨウム

ヨウム：知性と美しさ、そして保護の必要性

ヨウム(Psittacus erithacus)は、アフリカ西海岸の森林地帯に生息する大型のオウムです。灰色がかった羽毛、白い顔、そして鮮やかな赤い尾羽が特徴です。体長は約28～39cm、体重は400～500gほどになり、生息地域によって体格に差が見られます。コンゴ民主共和国周辺に生息する個体は特に大型化する傾向があります。冠羽を持たないのもヨウムの特徴の一つです。

生息地と生態

ヨウムは、ガーナからビクトリア湖周辺、アンゴラからコンゴ民主共和国に広がる低地から高地の森林、サバンナ、マングローブ林など、多様な環境に適応しています。夜間は数百羽から数千羽もの大規模な群れでねぐらに集まる習性があり、ガボン東部では5000羽以上の群れが同じねぐらを利用することが確認されています。

食性は主に種子や果実で、アブラヤシの実なども好んで食べます。平均寿命は約50年ですが、適切な環境下では100年近く生きる可能性もあります。

驚異的な知能とコミュニケーション能力

ヨウムは非常に高い知能を持つことで知られ、人間の言葉を理解し、コミュニケーションをとる能力も備えています。その知能は少なくとも5歳児に匹敵すると評価されており、単なる模倣を超えた言語能力を持つ鳥として研究対象となっています。声は白色オウムと比べると静かですが、電話やサイレンなど、様々な音を巧みに模倣する能力を持っています。

一方で、1歳半から2歳頃、そしてその後にもう一度、反抗期を迎える個体が多いとされています。この期間は自己主張が強まり、攻撃的な行動をとる場合もあるため注意が必要です。

性別と亜種

ヨウムの性別の判別は、特に幼鳥では困難です。しかし、メスはオスに比べて頭蓋骨や嘴が小さく、頭が丸く首が細い傾向があります。1歳半以降は、尾羽の先端の縁取りの色で見分けることができます。

ヨウムにはいくつかの亜種や変異種が存在します。例えば、コイネズミヨウムはヨウムよりも小型で、濃い灰色の体に暗赤色の尾羽を持ち、上嘴に褐色の部分があるのが特徴です。また、白色の体を持つ変異種や、背中が赤い「キングパロット」と呼ばれる変異種も存在します。

ワシントン条約とペットとしての飼育

ヨウムは、ペットとして人気のある大型インコですが、ワシントン条約によって国際取引が厳しく規制されています。2016年のワシントン条約締約国会議で、ヨウムが附属書Ⅱから附属書Ⅰに移行されたことにより、野生個体の商業取引が全面的に禁止されました。これにより、ペットとしてヨウムを飼育するには、繁殖個体（CB）であること、そして日本の種の保存法に基づく登録証を所有していることが必須となりました。すでに飼育している場合は登録証がなくても飼育を続けることができますが、譲渡する際には登録が必要です。

飼育上の注意点

ヨウムを飼育する際には、いくつかの点に注意が必要です。野生下では湿度60～80％の高湿度の環境に生息するため、飼育環境の温度と湿度管理が重要です。また、ヨウムは大量の脂粉を出すため、通気性にも配慮する必要があります。日光浴によるビタミンDの生成も不可欠です。

さらに、反抗期における攻撃性や、言葉遣いにも留意する必要があります。ヨウムは人間の言葉を理解し、時には悪態をつくこともあるため、子供への影響なども考慮する必要があります。

食餌

ヨウムの主食としては、栄養バランスに優れたペレットが推奨されていますが、嗜好性も考慮する必要があります。ビタミンA、カルシウム、ビタミンD3の不足にも注意し、チョコレート、アボカド、カフェイン、アルコールなど、摂取すべきでない食品にも注意が必要です。

世界的に有名なヨウム

アレックスやニキシといった、高度な言語能力を持つヨウムは、多くの研究者によって認知能力が研究され、鳥類の知能に関する理解を深める上で重要な役割を果たしました。これらの個体の研究成果は、ヨウムの知能の高さを示すだけでなく、鳥類の認知能力に対する認識を一新しました。

参考文献

本文中で引用した参考文献については、詳細なリストを別途ご確認ください。

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