ヨウ化水素

ヨウ化水素：強い刺激臭を持つ劇物

ヨウ化水素は、ハロゲン化水素の一種であり、水素とヨウ素から構成される無機化合物です。特徴的な強い刺激臭を持ち、無色の気体として存在します。毒物及び劇物取締法で定められた劇物に指定されており、取り扱いには細心の注意が必要です。

物理的・化学的性質

ヨウ化水素の分子式はHI、分子量は127.90です。融点は-50.8℃、沸点は-35.1℃と低く、常温では気体として存在します。pKa値が-10と非常に小さく、強酸であることが分かります。ヨウ素と水素の電気陰性度の差は小さいものの、ヨウ化物イオンの大きなイオン半径と水素イオンとの弱い静電気力によって、容易に電離し強酸性を示します。

空気中の酸素に容易に触れると酸化され、ヨウ素の赤紫色の特徴的な色を示します。水への溶解度は非常に高く、水溶液はヨウ化水素酸と呼ばれています。市販されているヨウ化水素酸は、一般的に57%水溶液(密度1.70g/cm³、7.6mol/dm³)です。塩化[[水素]]や臭化水素と同様に、水への溶解熱も非常に大きいです。

水溶液中では、以下の平衡反応が成立します。


HI(g) <=> H+(aq) + I-(aq)


この反応の標準エンタルピー変化(ΔH°)は-81.67 kJ/molと大きく発熱反応であることがわかります。

製法

ヨウ化水素は、通常、ヨウ素と水の混合物に冷却しながら赤リンを加えることで合成されます。この反応は、以下の化学式で表されます。


2P + 5I₂ + 8H₂O → 10HI + 2H₃PO₄


赤リンはヨウ素を還元し、ヨウ化水素を生成します。同時に、リン酸も生成されます。この反応は、注意深く制御する必要がある発熱反応です。

反応

ヨウ化水素酸は、様々な有機化合物と反応します。例えば、エーテルに作用させると、エーテル結合を開裂させ、アルコールとヨウ化アルキルを生成します。この反応は、以下の化学式で表されます。


R-O-R' + HI → R-OH + R'I


ここで、RとR'はアルキル基を表します。この反応は、アルコールやヨウ化アルキルの合成に利用されます。他にも、ヨウ化水素は、多くの金属や金属酸化物と反応し、対応するヨウ化物を生成します。その強酸性と還元性を活かした様々な反応が知られています。

安全性

ヨウ化水素は劇物であり、取り扱いには十分な注意が必要です。皮膚や粘膜に触れると、激しい刺激や腐食を引き起こします。吸入すると、呼吸器系に深刻なダメージを与える可能性があります。そのため、作業時は適切な保護具を着用し、換気のよい場所で取り扱う必要があります。誤って摂取した場合には、直ちに医療機関に連絡する必要があります。

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