ヨハネス・フィビゲル

ヨハネス・フィビゲル（Johannes Fibiger）

ヨハネス・フィビゲル（Johannes Andreas Grib Fibiger）は、1867年4月23日にデンマークのシルケボアで生まれ、1928年1月30日にコペンハーゲンで亡くなった病理学者です。彼は1926年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、その業績は当時の医学界に大きな影響を与えました。

生涯と学問的経歴

フィビゲルは、オーフス県の小さな町で育った後、コペンハーゲン大学医学部に進学し、1890年に卒業しました。卒業後はベルリンに留学し、著名な細菌学者ロベルト・コッホやベーリングのもとで経験を積みました。1900年にはデンマークに帰国し、コペンハーゲン大学の病理解剖学教授に就任。1926年には大学の総長としても活躍しました。

研究の成果とノーベル賞

フィビゲルが行った研究の中で特に注目されたのは、1907年に実施したネズミの胃癌に関する実験です。彼はこの際にSpiroptera carcinomaという線虫を発見しました。この線虫はゴキブリを宿主とし、ゴキブリを食べたネズミの胃で癌を引き起こすことが可能であることを示しました。フィビゲルはさらに、ネコに寄生する条虫を使用した実験でも、ネズミに肝臓肉腫を発生させることに成功しました。

彼の研究はウィルヒョーの反復刺激説と関連付けられ、癌の発生原因としての寄生虫の関与が強く示唆されました。そのため、彼の発見は当時の科学界で高く評価され、ノーベル医学賞の受賞に至りました。

研究の再評価と批判

しかしながら、フィビゲルの業績はその後再評価され、特に1952年にアメリカの研究者ヒッチコックとベルが行った研究によって疑問視されました。彼らは、ビタミンAの欠乏症があるラットにライン虫を感染させた実験で、フィビゲルが述べたような癌の発生が見られないことを報告しました。これにより、彼の研究における診断基準や結果に対する疑念が生じました。

今日では、フィビゲルが寄生虫によって癌が発生するという主張は、誤りであると広く受け止められています。しかし、2004年に発表された研究では、フィビゲルがノーベル賞を受賞した当時の文脈を考慮に入れ、その判断を単純化することはできないとして、彼の功績を否定するのは難しいことを指摘しています。

フィビゲルの業績は、科学研究における発見や判断が歴史的文脈の中でどのように評価されるかということを強調しています。彼の研究が行われた時期に、癌研究がどのように進展していたのかを考えることは、科学の歴史を理解するうえで重要です。フィビゲルの受賞を推薦したスウェーデンの学者フォルケ・ヘンシェンは、彼との友好関係が影響を与えたのかもしれませんが、同時に当時の癌研究の流れを理解する手がかりともなります。

関連項目

フィビゲルの研究は、後の科学者にも影響を与えており、たとえば山極勝三郎は化学物質による人工癌の発生に成功した事例が知られています。彼の研究は、医療科学における寄生虫の役割や癌の発生メカニズムに関する理解を深める上で重要です。

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