ヨハネス・ヨンストン

ヨハネス・ヨンストンの生涯と業績

ヨハネス・ヨンストン（Johannes Jonston, 1603年9月15日 - 1675年6月8日）は、スコットランドをルーツに持つ、ポーランドの著名な博物学者です。彼は、その多様な学識と精力的な著作活動により、17世紀のヨーロッパにおける博物学の発展に大きく貢献しました。彼の代表作である『鳥獣虫魚図譜』は、詳細な図版とともに動物や植物の情報をまとめ、当時の人々に自然界への理解を深めさせました。

生い立ちと教育

ヨンストンは1603年にポーランドのシャモトゥウィで生まれました。彼の父親はスコットランドからの移住者であり、ヨンストンは叔父の援助を受けながら教育を受けました。彼は、オストルクやビトムの学校で学んだ後、トルンの高校に進学しました。カルヴァン派の新教徒であったため、カトリックの影響が強いポーランドのヤギェウォ大学に進学することができず、スコットランドのセント・アンドルーズ大学で神学、スコラ哲学、ヘブライ語を学びました。

研究活動と著作

1625年にポーランドに戻ったヨンストンは、家庭教師として働きながら研究を続け、1628年までに『自然史ハンドブック』を出版しました。その後、ドイツやオランダに留学し、ケンブリッジ大学、フランクフルト大学、ライデン大学で植物学や医学を学びました。彼はデーフェンテル学校の教授に招聘されましたが、ポーランドに戻り、貴族の家庭教師として働きながら研究活動を継続しました。1632年から1634年にかけて、ヨーロッパの大学を巡り、学位を取得しました。

1636年にポーランドに帰国後、ヨンストンはレシュノのアカデミーで教鞭を執りました。彼は、哲学的、神学的、博物学的な知識を駆使し、百科事典的な内容を持つ多くの著作を残しました。

『鳥獣虫魚図譜』

ヨンストンの最も有名な業績は、1650年から1653年にかけて出版された『鳥獣虫魚図譜』です。この図譜は全5巻で構成され、1025ページにわたる詳細な解説と、2859点もの動物、鳥、魚、昆虫、蛇、そして伝説上のドラゴンに至るまでの精緻な図版が含まれています。これらの図版は、コンラート・ゲスナーやウリッセ・アルドロヴァンディといった先駆的な博物学者の書籍を参考に、マテウス・メーリアンの工房で制作されました。

『鳥獣虫魚図譜』は、当時の博物学の知識を体系的にまとめただけでなく、その美しい図版が多くの人々を魅了しました。この図譜はヨーロッパ各地に広まり、日本にもオランダ商館長を通じて江戸幕府に献上されました。徳川吉宗の命により、野呂元丈によって抄訳され、『阿蘭陀畜獣虫魚和解』（1741年）として刊行されました。

その他の著作

ヨンストンは、『鳥獣虫魚図譜』以外にも多数の著作を残しました。これらの著作は、彼の幅広い知識と研究活動を物語っています。主な著作としては、以下のようなものが挙げられます。

『Historiae naturalis de quadrupedibus libri』
『Historiae naturalis de insectis libri II』
『Historiae naturalis de exanguibus aquaticis libri IV』
『Historiae naturalis de piscibus et cetis libri V』
『Historiae naturalis de avibus libri VI』
『De Communione veteris Ecclesiae syntagma』
『Johannis Jonstonii de Festis Hebraeorum et Graecorum schediasma』
『Naeukeurige Beschryving Van de Natuur der Vier-voetige dieren』
『Magni Hippocratis Coacae praenotiones』
『Idea hygieines recensita』
『Notitia regni mineralis』
『Notitia regni vegetabilis』
『Dendrographias, sive historiae naturalis de arboribus et fructicibus』
『A Description of the Nature of Four-footed Beasts』
* 『Theatrum universale omnium animalium』

ヨンストンの影響

ヨハネス・ヨンストンは、博物学の分野において、その著作と研究を通じて多大な貢献を果たしました。彼の『鳥獣虫魚図譜』は、当時の人々に自然に対する理解を深めさせ、後の博物学の発展に大きな影響を与えました。ヨンストンの業績は、現代においても高く評価されており、彼の著作は、科学史における重要な資料として研究されています。

彼の博物学に対する情熱と知識は、時代を超えて私たちにインスピレーションを与え続けています。

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