ヨハネス19世 (ローマ教皇)

ヨハネス19世（生年不詳 - 1032年10月9日）は、11世紀初頭にローマ教皇を務めた人物です。在位期間は1024年から1032年まででした。本名はロマーノ・デイ・コンティ・ディ・トゥスコロといい、ラテン語ではロマヌス・コメス・トゥスクリと呼ばれました。

彼はローマの有力貴族であるトゥスコロ家に生まれ、その出自が彼の教皇選出に大きく影響しました。兄であるベネディクトゥス8世の死後、教皇に選ばれたものの、当時は聖職者としての経験が全くなく、執政官および元老院議員という世俗の肩書きしか持っていませんでした。そのため、教皇に就任するにあたって、まずは司教に任命される必要がありました。

ヨハネス19世の教皇としての行動は、いくつかの重要な出来事を含んでいます。彼は、教会の方針に反して、コンスタンティノープル総主教庁に多額の賄賂と引き換えに司教の肩書きを与えることを約束しました。しかし、この行為は聖職者からの強い反対にあい、約束はすぐに撤回せざるを得ませんでした。この一件は、当時の教会内部における権力構造と、ヨハネス19世のリーダーシップに対する批判的な見方を浮き彫りにしています。

1024年には、神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世が亡くなり、ヨハネス19世はその後継者としてコンラート2世を支持しました。そして、1027年の復活祭には、コンラート2世はサン・ピエトロ大聖堂で戴冠式を執り行いました。この出来事は、教皇と神聖ローマ皇帝との関係を示す重要な事例であり、ヨハネス19世が政治的な影響力を行使したことを示しています。

また、ヨハネス19世は教会内での権力闘争にも関与しました。1027年4月6日には、ラテラノ教会会議を開き、アクイレイア総大司教に対して総大司教の地位を認め、対立していたグラード総大司教を支配下に置くことを宣言しました。しかし、その2年後にはこの宣言を撤回し、グラード総大司教の地位を再び認めました。このような政策の変動は、当時の教会内での複雑な政治状況を反映していると言えるでしょう。さらに、彼はバーリの大司教ビザンティウスに公開勅書を与え、その12座の属司教の聖別権を付与しました。

ヨハネス19世の死後、教皇の地位は彼の甥であるベネディクトゥス9世が継承しました。ベネディクトゥス9世が教皇になった時、彼はまだ若かったとされ、史料によっては12歳であったとも伝えられていますが、通説では18歳から20歳程度であったと考えられています。

なお、教皇ヨハネスの代数については、複雑な経緯があります。ヨハネス20世は存在せず、次にヨハネスを名乗ったのは1276年に位に就いたヨハネス21世です。また、ヨハネス16世は対立教皇であったため、正確にはローマ教皇としてのヨハネスは18人目でしたが、同時代にはそのような認識はなく、16人目の教皇ヨハネスは自らをヨハネス17世と名乗ったため、18人目の教皇ヨハネスも19世となりました。さらに、一部の歴史家は、ヨハネス14世とヨハネス15世の間に、もう一人別の教皇ヨハネスがいたという伝説に基づき、ヨハネス19世を、ヨハネス20世、あるいはヨハネス19世（20世）と呼んでいます。このように、教皇ヨハネスの代数は非常に複雑なものとなっています。

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