ヨハン・エルンスト (ナッサウ＝ヴァイルブルク侯)

ヨハン・エルンスト：ナッサウ＝ヴァイルブルク侯、帝国陸軍元帥

ヨハン・エルンスト（Johann Ernst, 1664年 6月13日 - 1719年 2月27日）は、17世紀後半から18世紀初頭にかけて、ナッサウ＝ヴァイルブルク侯として領地を統治し、帝国陸軍元帥としても名を馳せた人物です。

生涯

ヨハン・エルンストは、ナッサウ＝ヴァイルブルク伯フリードリヒとその妃クリスティアーネ・エリーザベトの長男として生まれました。1675年に父が亡くなると、わずか11歳で弟フリードリヒ・ルートヴィヒと共にナッサウ＝ヴァイルブルク伯位を相続。幼少期はヴァイルブルクで過ごし、家庭教師から教育を受けました。1679年からはテュービンゲン大学で学び、1681年から1682年にはフランス王ルイ14世の宮廷に滞在するなど、国際的な感覚を養いました。

1684年に弟が亡くなると、ヨハン・エルンストはナッサウ＝ヴァイルブルク伯領の単独統治者となりました。当初はフランスに占領されていた領地の一部を、1697年のレイスウェイク条約によって取り戻し、ボーランデンを含む他の領地も獲得しました。また、領地を長子相続と定め、家の安定を図りました。

1688年、皇帝レオポルト1世は、ライン川右岸のヴァルラム系ナッサウ家の爵位を新たにしましたが、ヨハン・エルンストは公証手数料の支払いを拒否したため、侯の称号を正式に受け取ることはありませんでした。しかし、彼は先祖がすでに帝国伯の位を授与されていたことを知っており、侯としての自覚を持って統治を行いました。1719年にハイデルベルクで死去し、息子のカール・アウグストが後を継ぎました。

軍歴

ヨハン・エルンストは、軍人としても卓越した才能を発揮しました。1684年にヘッセン＝カッセル方伯に仕え、中佐としてキャリアをスタート。1688年には竜騎兵連隊の指揮官となり、プファルツ継承戦争でコブレンツの防衛に参加しました。その後も、マインツ包囲戦やフリュールスの戦いなど、数々の戦場で功績を挙げ、着実に昇進を重ねました。

1696年からは、オーバーライン・クライスの将軍としてプファルツ選帝侯領で任務につきました。1701年のスペイン継承戦争では、オーバーライン帝国軍を組織し、ランダウ・イン・デア・プファルツの包囲および襲撃に参加。タラール元帥率いるフランス軍をフンスリュックから追い出すなど、目覚ましい活躍を見せました。これらの功績により、プファルツ選帝侯領の元帥に任命されました。

しかし、1703年のシュパイアーバッハの戦いでは、帝国軍はフランス軍に敗北。この戦いで、ヨハン・エルンストの長男フリードリヒ・ルートヴィヒが戦死するという悲劇に見舞われました。その後、ヨハン・エルンストは大きな戦いには参加せず、1706年に軍務から引退。プファルツ選帝侯の侍従長となり、1716年にその職を辞してヴァイルブルクに戻りました。その功績により、聖ユベール騎士団への入会を認められました。

建築物

ヨハン・エルンストの統治下では、ヴァイルブルクの都市改造が積極的に行われました。ヴァイルブルク城とその城内教会の改築が1702年に始まり、ユリウス・ルートヴィヒ・ロトヴァイルが建設監督を務めました。宮殿の建物に加えて、市場広場、バロック様式の庭園、首相府などの管理棟も建設されました。さらに、動物園の再建、ヴィンドホフ農場とヴェアホルツ農場の建設、水道管の建設など、都市の機能性を高めるための様々な事業が実施されました。旧市街の城壁は取り壊され、主要な通りや広場がバロック様式につくり変えられ、都市の景観は大きく変化しました。ヨハン・エルンストは、これらの建設工事の費用のほとんどを自らの軍人時代の給与から支払ったとされています。

貨幣の鋳造

ヨハン・エルンストは、ナッサウ伯としての権利を行使し、貨幣の鋳造を行いました。ヴァイルブルクに貨幣鋳造所を建設し、造幣局長に運営を委託しましたが、粗悪な貨幣が鋳造されるという問題が発生しました。プファルツ選帝侯からの訴えにより、一時訴訟問題に発展しましたが、最終的には和解に至りました。また、ヴァイルミュンスターにも貨幣鋳造所が存在し、偽造貨幣の鋳造が行われていた疑いがありましたが、ヨハン・エルンストが直接関与した証拠は見つかっていません。

結婚と子女

1683年、ヨハン・エルンストはマリア・ポリクセナ・フォン・ライニンゲン＝ダグスブルク＝ハルテンブルクと結婚しました。夫妻の間には、4男5女が生まれました。長男のフリードリヒ・ルートヴィヒはシュパイアーバッハの戦いで戦死しましたが、次男のカール・アウグストはナッサウ＝ヴァイルブルク侯となり、家を継承しました。ルクセンブルク大公アンリは、ヨハン・エルンストの子孫にあたります。

ヨハン・エルンストは、領地の統治者として、また軍人として、そして都市の建設者として、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。彼の功績は、ナッサウ＝ヴァイルブルクの歴史に深く刻まれています。

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