ヨハン・スヴェンセン

ヨハン・セヴェリン・スヴェンセン

ノルウェーがスウェーデンの統治下にあった1840年9月30日、クリスチャニア（現在のオスロ）に生まれたヨハン・セヴェリン・スヴェンセンは、作曲家、指揮者、そしてヴァイオリニストとして多岐にわたる才能を発揮しました。生涯のほとんどをデンマークのコペンハーゲンで過ごし、1911年6月14日に同地で70年の生涯を閉じています。

スヴェンセンの音楽は、同時代のノルウェーを代表する作曲家、エドヴァルド・グリーグのものとは対照的な特徴を持っていました。グリーグがしばしば響きの美しさを追求し、より小規模な編成での作曲を好んだのに対し、スヴェンセンはオーケストラなどの大規模な編成を主要な活躍の場とし、特にその卓越した管弦楽法の手腕が高く評価されました。彼の作品の中でも、ヴァイオリンと管弦楽のために書かれた「ロマンス 作品26」は特に広く知られています。

初期の室内楽作品において、スヴェンセンはその才能の片鱗を見せています。例えば、「弦楽四重奏曲イ短調 作品1」にはシューベルトからの影響がうかがえる一方、それに続く「弦楽八重奏曲イ長調 作品3」は、発表されるやいなや音楽界から広く認められ、彼の名前を世に知らしめる契機となりました。また、彼は著名な作曲家リヒャルト・ワーグナーとの間にも一時的に親密な交流を持っていました。

スヴェンセンは生前、作曲家としてだけでなく、指揮者としても非常に高い評価と人気を得ていました。その功績に対し、国家からも数多くの栄誉が授与されています。しかしながら、彼の名声が後世まで持続したわけではなく、時代と共にその音楽が演奏される機会は減少していきました。

彼の主要な作品群には、以下のものが含まれます。

交響曲:
交響曲第1番ニ長調 作品4
交響曲第2変ロ長調 作品15
協奏曲:
ヴァイオリン協奏曲 作品6
チェロ協奏曲 作品7
ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス 作品26
管弦楽曲:
ノルウェー狂詩曲第1番〜第4番（作品17, 19, 21, 22）
パリの謝肉祭 作品9
ロメオとジュリエット 作品18
その他の多くの作品
室内楽曲:
弦楽四重奏曲イ短調 作品1
弦楽八重奏曲イ長調 作品3
弦楽五重奏曲ハ長調 作品5

スヴェンセンの音楽は、後進の作曲家にも影響を与えています。特に、デンマークの作曲家カール・ニールセンは、指揮者としてスヴェンセンのアシスタントを務める中で、作曲技法においても彼から学んだ点が多かったとされます。ニールセンの初期の交響曲、例えば第4番までの作品には、スヴェンセンが得意とした、急速な楽章における激しい民族舞曲のリズムや、中間楽章に見られる牧歌的な雰囲気といった要素が共通して見出されることがあります。

ノルウェーが生んだ才能豊かな音楽家、ヨハン・セヴェリン・スヴェンセンは、その管弦楽法の技術と大規模作品への情熱によって、一時代を築きました。彼の作品は今日でも演奏される機会は少ないかもしれませんが、北欧のロマン派音楽における重要な一端を担っています。

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