ヨハン・フォースター

ヨハン・ラインホルト・フォースター：博物学者としての波乱に満ちた生涯

ヨハン・ラインホルト・フォースター (1729-1798) は、スコットランドにルーツを持つドイツの博物学者として、18世紀の科学史に重要な足跡を残しました。彼の生涯は、学問への探究心と、幾多の困難に立ち向かう不屈の精神に彩られています。

スコットランドからの移民と学問への道: フォースターの祖先はスコットランド貴族フォースター卿にまで遡り、曽祖父の代にクロムウェルの時代に財産を失い、ドイツへ移住しました。彼はプロイセン王国で生まれ、ハレ大学で神学を学びました。その後、ルター派の聖職者として務めたのち、1766年には息子ゲオルクと共にイギリスへ渡り、ウォリントン・ディセンターズ・アカデミーで教鞭を執りました。イギリスでの生活を通して、彼は博物学への関心を深め、卓越した博物学者としての地位を確立していきました。

クック船長との太平洋航海： フォースター父子は、ジェームズ・クック船長の二度目の太平洋探検航海(1772-1775) に博物学者として参加する機会を得ました。これは、ジョゼフ・バンクスが参加を取りやめたことにより、フォースター父子がその座を獲得したという、歴史的な出来事でした。航海中、彼らは熱心な観察を行い、膨大な量の日記、自然史標本、そして現地住民の道具のコレクションを残しました。この航海の経験は、フォースターの博物学研究に計り知れない影響を与えました。

航海後の活動と学問的成果： 航海から帰国後、フォースターは航海の成果をまとめた『Observations Made during a Voyage round the World』を出版しました。しかし、その収入は彼の債務を解消するには不十分でした。そのため、息子ゲオルクが描いた図は、ジョゼフ・バンクスに売却せざるを得ませんでした。その後も彼は精力的に執筆活動を続け、トーマス・ペナントの北極動物に関する著書のドイツ語訳などに取り組みました。

1779年には、ハレ大学の博物学と鉱物学の教授に就任し、没するまでその職を務めました。彼の1772年から1773年にかけて王立協会のフィロソフィカル・トランザクションズに発表された論文は、北アメリカの動物学における彼の権威的地位を確立するものでした。また、1772年には王立協会のフェローにも選出されています。死後も、彼の業績は高く評価され続け、クック船長と共にイギリスに戻ってから1月以内に完成した『Descriptiones animalium』は、マルティン・ハインリヒ・リヒテンシュタインによって編集され、1844年に出版されました。

まとめ： ヨハン・ラインホルト・フォースターは、スコットランドからの移民という出自、聖職者としての経験、そしてクック船長との航海というユニークな経歴を持つ博物学者でした。彼の生涯は、学問への飽くなき探究心と、困難に屈しない不屈の精神で彩られています。彼の研究は、現代の博物学、鳥類学、そして太平洋地域研究に多大な貢献をしました。彼の残した膨大な記録と標本は、今もなお、多くの研究者にとって貴重な資料として活用されています。

もう一度検索