ヨハン・フリーゾ・ファン・オラニエ＝ナッサウ

ヨハン・フリーゾ・ファン・オラニエ＝ナッサウ

ヨハン・フリーゾ・ファン・オラニエ＝ナッサウ（Johan Friso van Oranje-Nassau, 1968年9月25日 - 2013年8月12日）は、オランダの王族。ベアトリクス元女王とその夫であるクラウス・フォン・アムスベルク王配の間に生まれた次男であり、現国王ウィレム＝アレクサンダーの弟にあたる。正式な名前はヨハン・フリーゾ・ベルンハルト・クリスティアン・ダーヴィト・ファン・オラニエ＝ナッサウ・ファン・アムスベルクといった。

王位継承順位にあった時期には王子（Prins）の称号を有していたが、後述の結婚に伴い王位継承権を放棄。これ以降はオラニエ＝ナッサウ公子およびオラニエ＝ナッサウ伯爵の称号を用いた。

人物と経歴

オランダの首都アムステルダムで生を受けた。高度な教育を受け、デルフト工科大学での学びを経て、アメリカ合衆国のカリフォルニア大学バークレー校へ留学した。帰国後、オランダのロッテルダム・エラスムス大学で宇宙航空工学と経済学という異なる分野を修めた。さらに、1997年にはフランスのINSEADで経営学修士（MBA）を取得するなど、学究肌の人物であった。

婚約と王位継承権の放棄

2003年7月、人権保護活動に携わるメイベル・ウィサスミットとの婚約が発表された。しかし、この婚約はメイベルの過去の交友関係が公になり、大きな波紋を呼んだ。特に、大学生時代にヨーロッパで著名だった麻薬密売組織の首領とされる人物と関係があったことや、国連職員時代にボスニア・ヘルツェゴビナの国連大使（後に公金横領で逮捕された人物）と不適切な関係を持っていたとされる疑惑が問題視された。これらの問題に対し、オランダ政府および議会は、王位継承者の配偶者に求められる承認を与えない姿勢を示した。

オランダの法制度では、王位継承者が結婚する際には政府と議会の承認が必須とされている。この承認が得られなかったため、ヨハン・フリーゾは婚約を破棄するか、あるいは王位継承権を放棄するかの難しい選択を迫られることとなった。兄ウィレム＝アレクサンダー王太子（当時）の結婚に続くこの騒動は、国民の関心を集めた。最終的に、同年10月、ヨハン・フリーゾ自身が当時のバルケネンデ首相に書簡を送付し、自身の王位継承権を放棄することを表明した。これにより、自身および将来生まれる子孫は王位継承権を持たないこととなったが、王族としての身分は維持される形で事態は収拾された。

結婚後の生活

王位継承権放棄から数か月後の2004年4月26日、アムステルダムにて結婚式が執り行われた。王位継承者ではなくなったとはいえ、当時の女王である母ベアトリクスや兄ウィレム＝アレクサンダー、弟コンスタンティンらが列席する盛大な挙式であった。結婚後、夫妻はロンドンへ生活の拠点を移した。ロンドンでは、2005年3月26日に長女ルアナを、翌2006年6月18日には次女ザリアを迎えている。

その他のエピソード

結婚前の2002年には、女性関係の浮いた噂がなかったことから、国内のゲイ・コミュニティーで人気が高まり、ゲイであるとの憶測が広がったことがある。これに対し、王室が公式にこれを否定するという異例の事態となった。これは、彼の真面目で学究的な人柄から、個人的な情報が少ないことが背景にあったと見られている。

また、2007年には、王宮のネットワークから、オンライン百科事典であるウィキペディア上の妻メイベルに関する都合の悪い記事が編集された痕跡が発見され、問題となった。

雪崩事故による薨去

2012年2月17日、オーストリアのフォアアールベルク州にあるレッヒ・アム・アールベルクを訪れていた際、悲劇的な事故に見舞われた。地元の雪崩監視機関が雪崩警報を出していたにもかかわらず、管理区域外（オフピステ）で友人と共にスキーをしていた最中に雪崩に巻き込まれたのである。

救助隊によって発見・救出されたものの、雪の中に長時間埋まっていたことによる低酸素脳症のため、極めて危険な状態となり、意識不明の重体に陥った。その後の緊急的な手当により一時的に命は取り留めたものの、遷延性意識障害（植物状態）が続いた。同年3月1日、より専門的な治療を受けるため、王子一家が居住していたロンドンのウェリントン病院へ転院。オランダ王室によれば、専門家らの勧告に基づき、王子の容体にとって最適な治療環境を提供する施設として選ばれたという。

しかし、長期にわたる懸命な治療にもかかわらず、回復の兆しは見られなかった。2013年8月12日、意識不明の状態が続く中、滞在していたハーグのハウステンボス宮殿にて逝去した。44歳という若さでの突然の死であった。

子女

妻メイベルとの間には二人の娘がいる。

エマ・ルアナ・ニネット・ソフィー（2005年3月26日生）
ヨアンナ・ザリア・ニコリーン・ミルー（2006年6月18日生）

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