ヨン・レイフス

ヨン・レイフス（Jón Leifs, 1899年5月1日 - 1968年7月30日）

アイスランドを代表する作曲家。

生涯

アイスランド南部の農村に生まれたヨン・レイフスは、幼少期に首都レイキャヴィークへ家族とともに転居し、少年時代を過ごしました。17歳で単身ドイツに渡り、音楽の専門教育を受けるためライプツィヒ音楽院に入学します。

1930年代にはベルリンを拠点に活動し、ユダヤ系ピアニストの女性と結婚、二人の娘を授かりました。1938年、アイスランドの放送局から音楽ディレクター就任の打診を受け、故国への貢献を願うレイフスはこれを喜んで引き受けます。しかし、ドイツでのキャリア継続を望む妻の意向もあり、彼は単身アイスランドへ帰国しました。故国では彼の革新的な音楽性がすぐには理解されず、期待された職務も順調に進まなかったため、わずか二年でドイツへ戻ることになりました。

しかし、当時ドイツではナチス政権によるユダヤ人迫害が激化しており、ユダヤ系である妻を持つレイフスとその家族は危険な状況に置かれました。第二次世界大戦中の1944年には、身の危険から逃れるため家族とともにスウェーデンへ亡命しましたが、この間に妻との関係が悪化し、離婚に至りました。

終戦後、レイフスは再びアイスランドへ帰国し、音楽活動を再開しました。この頃になると、故国の人々も彼の独特な音楽語法やアイスランドの自然・文化に根ざした作品への理解を深め、徐々に彼の作品は受け入れられるようになりました。私生活では、1956年に再婚し、新たな家庭を築き、息子を授かっています。

晩年のレイフスは、アイスランド音楽界における重鎮としての地位を確立し、作曲家協会の会長を務めるなど、後進の育成や音楽振興にも尽力しました。1968年7月30日、故郷レイキャヴィークでその波乱に満ちた生涯を閉じました。

音楽性とその影響

彼の最も特筆すべき功績は、アイスランド固有の民俗音楽の要素をクラシック音楽に積極的に取り入れた最初の作曲家である点にあります。これは、それまでヨーロッパ大陸の音楽伝統に倣うことが多かったアイスランド音楽界において、画期的な試みでした。彼の作品には、アイスランド民謡を基盤としたピアノ曲や、国土の多くを占める火山活動や壮大な自然からインスピレーションを得た、力強く劇的な表現を持つ合唱曲、交響曲などが含まれます。特に、火山噴火を題材にした作品などは、アイスランドの自然の持つ激しさや畏敬の念を喚起させるものとして知られています。

レイフスの作品は生前には必ずしも広く知られていたわけではありませんでしたが、没後、特に1990年代後半からスウェーデンのBISレーベルが彼の作品を体系的に録音・発売したことにより、国際的な再評価が進みました。これにより、彼のユニークな音楽性が世界中の聴衆に知られるようになりました。

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