ヨーゼフ・グングル

ヨーゼフ・グングル（Josef Gung'l, 1809年12月1日 - 1889年2月1日）は、ハンガリーに生まれ、主に19世紀後半に活躍した作曲家および指揮者です。

ドイツ系の父を持つグングルは、ハンガリーのジャームベークで生を受けました。当初はブダで教員を務める傍ら、学校の合唱指揮者から音楽の手ほどきを受け、音楽の道へと進みます。その後、グラーツでオーボエ奏者としてキャリアをスタートさせ、25歳の若さでオーストリア砲兵第4連隊の楽長に就任しました。軍楽長としての活動を開始したグングルは、1836年に作曲した「ハンガリー行進曲」で初めて大きな注目を集めることになります。

転機が訪れたのは1843年、グングルがベルリンで自身のオーケストラを結成したことです。この楽団はたちまちその質の高さで評判を呼び、「ベルリンのシュトラウス」と称されるほどになりました。グングルのオーケストラの演奏水準は非常に高く、高額な入場料を設定する宮廷楽団と比較しても遜色ないとまで言われました。聴衆は、通常1ターラーといった高額な入場料で聴けるレベルの音楽を、彼の楽団ではわずか2グロッシェン半から5グロッシェンという手頃な価格で楽しむことができたため、その人気は爆発的でした。楽団のレパートリーは、当時流行していたワルツやポルカといったダンス音楽から、モーツァルトやベートーヴェンといった古典派の交響曲に至るまで非常に幅広く、貴族を含むベルリン社会のあらゆる階層で支持されました。特に、フェリックス・メンデルスゾーンの劇付随音楽『夏の夜の夢』の完全版を初演したのも、このグングルの楽団であったと伝えられています。

このオーケストラを率いて、グングルはヨーロッパ各地を精力的に巡演しました。さらに1848年から1849年にかけては、遠くアメリカ合衆国への大規模な演奏旅行も敢行し、国際的な名声も確立しました。

ベルリンでの成功の後も、グングルの活動拠点はしばしば移り変わりました。1853年にはブルノの第23歩兵連隊の楽長に就任し、その後1864年にはミュンヘンに移りました。1873年にはロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで開催された一連のプロムナード・コンサートで成功を収め、その評価を不動のものとしました。1876年からはフランクフルトを本拠地として活動を続けました。晩年は、著名なオペラ歌手となった娘と共にドイツのヴァイマルに移り住み、この地でその生涯を終えました。

グングルは非常に多作な作曲家であり、生涯にわたって436曲もの舞曲を作曲したとされています。その作品の中では、ワルツ『アモレット・ダンス』や『ハイドロパテン』、『カジノ・ダンス』、『大海原の夢』、そしてポルカ『In Stiller Mitternacht』やマズルカ『Blue Violets』などが特に有名です。彼の「ハンガリー行進曲」は、フランツ・リストによってピアノ用に編曲されるなど、同時代の著名な音楽家からも評価されました。グングルの音楽の特徴は、聴き手を惹きつける軽やかな旋律の流れと、はっきりとしたリズミカルな魅力にあります。これらの要素は、舞曲の分野で彼と並び称され、後にその人気を凌駕することになるヨハン・シュトラウス2世の作品にも共通する特質です。グングルは、シュトラウス一家と並んで、19世紀のヨーロッパにおける舞曲と軽音楽の普及に大きく貢献した重要な音楽家の一人として記憶されています。

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