ヨーデル食べ放題

ヨーデル食べ放題：一曲の軌跡

「ヨーデル食べ放題」は、独特のユーモアとキャッチーなメロディーで知られるコミックソングです。作詞・作曲はリピート山中氏、編曲は赤坂東児氏、そして、桂雀三郎withまんぷくブラザーズがその軽快な歌声を披露しています。焼肉食べ放題をテーマにしたヨーデルソングという、一見すると奇抜な組み合わせが、多くのリスナーの心を掴みました。

1996年2月、この曲は自主制作レーベルであるやぐらエンターテインメントから発売されたミニアルバム「やぐら行進曲」に収録されました。しかし、この時点では、まだ知る人ぞ知る存在でした。同年11月27日、東芝EMIから一部歌詞を変更した再録版がシングルとして発売されます。発売当初は関西地方で話題となり、それなりの人気を得ましたが、売上枚数は伸び悩み、月間100～200枚程度にとどまりました。売上の大半も関西地方に集中していました。

状況が大きく変わったのは、1997年以降のことです。高田文夫氏がニッポン放送『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』でこの曲を幾度か紹介。当初は大きな反響はありませんでしたが、2000年6月21日の放送でリスナーのリクエストに応えて再度紹介したところ、状況が一変します。

この放送をきっかけに、「ヨーデル食べ放題」は人気に火が点きました。特に、関西地方よりもむしろ関東地方で話題となり、わずか2週間で1万5000枚もの注文が殺到しました。同年7月10日には、桂雀三郎氏とリピート山中氏が番組に生出演し、その人気をさらに後押ししました。この年の売上枚数は約12万枚に達し、大ヒットとなりました。最終的な累計売上枚数は15万枚にのぼります。

このヒットの要因は、楽曲の面白さだけでなく、ラジオ番組での紹介が果たした役割も大きかったと言えるでしょう。高田文夫氏の絶妙な紹介と、リスナーの熱意が相まって、この曲は口コミで広がり、予想をはるかに超える人気を獲得しました。

「ヨーデル食べ放題」は、その人気をさらに拡大させていきます。東芝EMIのコンピレーション・アルバムであるDancemaniaシリーズには、ボーナストラックとしてユーロビートバージョンが収録されました。さらに、読売ジャイアンツの依頼によりアレンジされたバージョンは、2001年に同球団の公式戦応援歌「ヨーデル勝ち放題」として使用されました。このバージョンでは、当時日本プロ野球に参加していた12球団全てが歌われています。

映画『ウォーターボーイズ』への楽曲提供、そして2013年2月9日にはユニバーサルミュージックからの音楽配信開始など、「ヨーデル食べ放題」は様々なメディアを通してその存在感を示し続けました。

現在でもその人気は健在で、2015年3月22日からはJR西日本大阪環状線鶴橋駅の発車メロディーとして使用されています。鶴橋駅周辺が焼肉店が多いことから、この楽曲が選ばれたのは、なんとも象徴的な出来事と言えるでしょう。

「ヨーデル食べ放題」は、一過性の流行ではなく、時代を超えて愛され続けるコミックソングとして、その地位を確立しました。その独特のユーモアと、予想外の展開が織りなす物語は、これからも多くの人々に楽しさを与え続けることでしょう。楽曲が持つ、時代や世代を超えた魅力が、この曲の成功を物語っています。桂枝雀、桂雀々、桂雀喜、桂あさ吉といった落語家たちの参加も、この曲に独特の深みを与えています。

この曲は、単なる楽曲を超えた、一つの文化現象として、日本の音楽史にその名を刻んでいると言えるでしょう。

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