ライトアップ! イルミネーション大戦争

『ライトアップ! イルミネーション大戦争』

イルミネーションを巡るご近所トラブル

2006年にアメリカ合衆国で製作されたコメディ映画、『ライトアップ! イルミネーション大戦争』（原題：Deck the Halls）は、クリスマスを間近に控えた住宅街で巻き起こる、隣人同士の壮絶な飾り付け合戦を描いた作品です。監督はジョン・ホワイトセルが務め、個性派俳優のダニー・デヴィートと実力派のマシュー・ブロデリックが主演を務めています。この映画は、アメリカでは劇場公開されましたが、日本では劇場公開されず、後にビデオスルーという形で紹介されました。

物語の舞台は、アメリカ北東部にあるニューイングランド地方の穏やかな住宅街です。主人公のスティーブ・フィンチは、規律を重んじ、何事も計画通りに進める性格の男性。特にクリスマスの時期は、家族との静かで伝統的な過ごし方を大切にしています。そんな彼の家の向かいに、ある日、ホール一家が引っ越してきます。一家の大黒柱であるバディ・ホールは、楽天的で衝動的な行動を取りがちな人物です。

引っ越し早々、バディは娘から「私たちの家はインターネットの衛星写真で見ても目立たない」と言われたことにショックを受けます。この一言がきっかけとなり、バディは自宅を世界中どこからでも見えるくらい派手に飾り立てるという突飛なアイデアを思いつきます。彼は家全体をLEDライトや様々な装飾品で埋め尽くし始めます。当初は物珍しさで見られていたバディのイルミネーションですが、彼の情熱は留まることを知らず、飾り付けは常軌を逸したレベルにまでエスカレートしていきます。あまりにも強烈な光と騒音は、ついに向かいに住むスティーブの平穏な生活を脅かすようになります。夜はまともに眠れなくなり、自宅の窓から外を見ることも困難になるなど、その影響は深刻なものでした。

静かなクリスマスを望むスティーブにとって、バディの行動は到底受け入れられるものではありませんでした。再三の注意も効果がなく、我慢の限界に達したスティーブは、バディの行き過ぎたイルミネーション計画を阻止するため、あらゆる手段を使って妨害し始めます。バディもまた、スティーブの妨害行為に対抗し、イルミネーション合戦は次第にエスカレートし、ご近所を巻き込んだ一大騒動へと発展していきます。この対立を通じて、二人の家族も騒動に巻き込まれ、それぞれの家族関係にも影響が及んでいきます。しかし、このドタバタ劇の中で、彼らはクリスマスの本来の意味や、家族、そして隣人との関係性について考えさせられることになります。

主要キャストとしては、過剰なイルミネーションに情熱を燃やすバディ・ホールをダニー・デヴィートが、その隣人で保守的なスティーブ・フィンチをマシュー・ブロデリックが演じ、対照的な二人の掛け合いがコメディの中心を担います。スティーブの妻ケリーをクリスティン・デイビス、バディの妻ティアをクリスティン・チェノウェスが演じるなど、個性豊かな俳優陣が脇を固めています。日本語吹替版では、バディ・ホール役に青野武、スティーブ・フィンチ役に宮本充が声を当てており、ベテラン声優陣の演技も魅力の一つです。

本作は、その過激なコメディ描写から、第27回ゴールデンラズベリー賞においていくつかの部門でノミネートされました。具体的には、ダニー・デヴィートが最低助演男優賞に、クリスティン・チェノウェスが最低助演女優賞に、そして作品自体が「ファミリー映画と宣った最低作品賞」にノミネートされています。これは、期待された「ファミリー向け」の枠を超えた、あるいは外れたコメディ要素や演出が、批評家や一部の観客から賛否両論を巻き起こした結果と言えるでしょう。

『ライトアップ! イルミネーション大戦争』は、クリスマスという華やかな季節を舞台にしながらも、隣人同士の競争心や見栄、そして最終的には家族との絆や本当の幸せとは何かを問いかけるコメディ映画です。派手なイルミネーション合戦という非日常的な出来事をコミカルに描きつつ、その根底には現代社会における人間関係や家族のあり方に対するメッセージが込められています。馬鹿馬鹿しい争いの中に、共感や感動を見出すことができるかもしれません。

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