ライマン・フランク・ボーム

ライマン・フランク・ボーム：オズの世界を生み出した多才な作家

ライマン・フランク・ボーム(1856年5月15日 - 1919年5月6日)は、アメリカ合衆国を代表する児童文学作家であり、ファンタジー小説の巨匠です。今日でも世界中で愛される『オズの魔法使い』シリーズをはじめ、60編以上の童話や児童文学作品を発表しました。バウム、バームといった表記も用いられており、女性名義を含む複数のペンネームで執筆活動を行うなど、多様な顔を持つ人物でした。

裕福な家庭と波瀾万丈の青年時代

ニューヨーク州でメソジスト派の家庭に生まれ育ったボームは、裕福な環境で9人の兄弟姉妹の中で育ちました。父はペンシルベニア州の油田で成功を収めた実業家でした。家庭での教育を受けた後、ピークスキル士官学校に入学しますが、健康上の理由で2年後に退学しています。

幼い頃から創作活動に興味を持ち、自作の新聞や雑誌を発行するなど、出版への道を歩み始めました。青年期には養鶏業を営み、専門誌の創刊や養鶏に関する書籍の出版も行っています。一方、演劇にも強い情熱を抱き、俳優や脚本家として活動する傍ら、自身の劇場を所有するまでに至りました。演劇活動を通じて、のちに妻となるモード・ゲージと出会っています。しかし、演劇活動はビジネスの失敗が続き、常に経済的な苦労を強いられることとなります。

サウスダコタでの生活と『オズの魔法使い』誕生

1888年、ボームは妻とサウスダコタ州に移住し、雑貨店を開業しますが、経営は失敗に終わります。その後、地方新聞の編集者となりコラム執筆も経験します。このサウスダコタでの生活経験が、『オズの魔法使い』におけるカンザス州の描写に影響を与えているとされています。

1891年に新聞が閉鎖されると、シカゴに移住したボームは新聞記者やセールスマンとして生計を立てながら執筆活動を継続します。1897年に出版した『散文のマザー・グース』が成功を収め、セールスマンとしての仕事から解放されたボームは、1899年にはナンセンス詩集『ファーザー・グース、彼の本』を出版し、大ヒットとなります。

そして1900年、ボームはイラストレーターのW・W・デンスロウと共同で『オズの素晴らしい魔法使い』を出版しました。本作は批評家や読者から絶賛され、商業的にも大成功を収めます。2年間、児童書のベストセラーの座に君臨した『オズの魔法使い』は、その後も数多くの続編が発表され、シリーズとして発展していくことになります。

舞台、映画そして晩年

『オズの魔法使い』はミュージカルにも舞台化され、大きな成功を収めます。しかし、続編のミュージカル化は失敗に終わるなど、ボームの創作活動は常に成功と失敗を繰り返しました。また、凝った舞台作品への投資は、莫大な借金を生み出し、ボームは初期の作品の著作権を売却せざるを得ない状況に陥ります。

晩年には、ハリウッドに移住し、自ら映画制作会社を設立するなど、精力的に活動しましたが、1919年、脳卒中で亡くなりました。オズシリーズの最終巻『オズのグリンダ』は彼の死後に出版されました。

多様なペンネームと多様な作品

ボームはオズシリーズ以外にも多くの作品を発表しており、その中には、複数のペンネームを用いて執筆されたものも含まれています。彼の多様な才能と創作意欲は、オズシリーズにとどまらず、様々なジャンルの作品を生み出しました。その作品群は、彼の豊かな想像力と表現力を物語っています。

ボームの作品は、今日でも世界中で愛され続けており、彼の功績は現代の児童文学に多大な影響を与え続けています。彼の生涯は、創作への情熱と、常に新しいことに挑戦する姿勢を示す、まさに波瀾万丈の物語と言えるでしょう。

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