ラウドン伯爵

ラウドン伯爵（Earl of Loudoun）は、スコットランド貴族の爵位であり、その歴史は17世紀初頭に遡ります。この爵位は、キャンベル氏族の一員であるヒュー・キャンベルが1601年にラウドンのキャンベル卿に叙されたことから始まりました。その後、彼の孫娘の結婚を機に、ジョン・キャンベルが爵位を継承し、1633年にはラウドン伯爵に叙せられました。

歴史

キャンベル氏族と初期の爵位

1601年、ヒュー・キャンベルがラウドンのキャンベル卿に叙せられたことで、この家の歴史が幕を開けました。彼の孫娘マーガレットが同族のジョン・キャンベルと結婚した際、ヒューは義理の孫に爵位を譲るために卿位を退きました。ジョンが正式に卿位を継承したのは1622年でした。

初代ラウドン伯爵ジョン・キャンベル

ジョン・キャンベルは、清教徒革命から王政復古期にかけて、政治的に重要な役割を果たしました。彼は、同族のアーガイル侯爵とともに、王党派と議会派の間で巧みに立ち回り、1626年には新王チャールズ1世の失効法の適用緩和を求める使節団の一員として選ばれました。この謁見で国王の知遇を得たジョンは、1633年にラウドン伯爵とタリナン＝モウクリン卿に叙せられ、このことがラウドン伯爵家の始まりとなりました。以降、この爵位は彼の直系子孫によって継承されていきます。

女系継承への変遷

3代伯ヒューは、スコットランド王国の国務大臣を務めた政治家で、1706年のイングランド王国との合同交渉にも参加しました。彼は1707年に爵位を一旦王冠に返上し、再叙爵を受けることで、伯爵位の継承条件を両系相続人に変更しました。これにより、男子相続人がいない場合でも女性が爵位を継承できるようになり、後の度重なる女系継承の道が開かれました。

著名な伯爵たち

4代伯ジョンは、七年戦争で活躍した将軍で、北米英軍総司令官やエディンバラ城代を務めました。5代伯ジェームズは息子がいなかったため、娘のフローラが爵位を継承し、最初の女系継承が行われました。フローラはアイルランド[[貴族]]のモイラ伯爵と結婚したことで、爵位はヘイスティングズ家に受け継がれることとなりました。モイラ伯爵はインド総督として知られ、後にヘイスティングズ侯爵に昇進しました。その子ジョージは、父からヘイスティングズ侯爵位を、母からラウドン伯爵位を相続しました。

複雑な継承の歴史

ヘイスティングズ侯爵位は、2代侯と3代侯が早世したことで断絶しましたが、ラウドン伯爵位は再び女系継承により4代侯の姉であるイーディスに引き継がれました。10代女伯イーディスは、伯爵位を継承した後、他のイングランド[[貴族]]の爵位も継承しました。その後も、11代伯チャールズが子孫を残さずに亡くなったことで、三度目の女系継承が起こり、弟の娘イーディス・モードが12代伯爵となりました。12代女伯イーディスは一人息子を第二次世界大戦で失ったため、四度目の女系継承が行われ、長女バーバラが13代女伯となりました。現在の爵位は、バーバラの長男である15代伯サイモンが継承しています。

近年の動向

14代伯マイケルは、2004年に「英王位の正当な継承者」としてメディアに取り上げられ、話題を呼びました。現在、爵位は15代伯サイモンが保持しており、彼の弟であるマーカスが推定相続人となっています。

現当主の保有爵位

現当主である第15代ラウドン伯爵サイモン・マイケル・アブニー＝ヘイスティングズは、以下の爵位を保有しています。

第15代ラウドン伯爵 (15th Earl of Loudoun)
第15代ラウドンのキャンベル卿 (15th Lord Campbell of Loudoun)
第15代タリナン＝モウクリン卿 (15th Lord Tarrinzean and Mauchline)

ラウドン伯爵一覧

ラウドンのキャンベル卿（1601年）

1. 初代ラウドンのキャンベル卿ヒュー・キャンベル（1622年没）
2. 第2代ラウドンのキャンベル卿ジョン・キャンベル (1598–1662)

ラウドン伯爵（1633年）

1. 初代ラウドン伯爵ジョン・キャンベル (1598–1662)
2. 第2代ラウドン伯爵ジェームズ・キャンベル (d. 1684)
3. 第3代ラウドン伯爵ヒュー・キャンベル (d. 1731)
4. 第4代ラウドン伯爵ジョン・キャンベル (1705–1782)
5. 第5代ラウドン伯爵ジェームズ・ミュア＝キャンベル (1726–1786)
6. 第6代ラウドン女伯爵フローラ・ミュア＝キャンベル (1780–1840)
7. 第7代ラウドン伯爵（第2代ヘイスティングズ侯爵）ジョージ・オーガスタス・フランシス・ロードン＝ヘイスティングズ (1808–1844)
8. 第8代ラウドン伯爵（第3代ヘイスティングズ侯爵）ポーリン・レジナルド・セルロ・ロードン＝ヘイスティングズ (1832–1851)
9. 第9代ラウドン伯爵（第4代ヘイスティングズ侯爵）ヘンリー・ウェイズフォード・チャールズ・プランタジネット・ロードン＝ヘイスティングズ (1842–1868)
10. 第10代ラウドン女伯爵イーディス・モード・ロードン＝ヘイスティングズ (1833–1874)
11. 第11代ラウドン伯爵チャールズ・エドワード・ロードン＝ヘイスティングズ (1855–1920)
12. 第12代ラウドン女伯爵イーディス・モード・アブニー＝ヘイスティングズ (1883–1960)
13. 第13代ラウドン女伯爵バーバラ・ハドルストン・アブニー＝ヘイスティングズ (1919–2002)
14. 第14代ラウドン伯爵マイケル・エドワード・アブニー＝ヘイスティングズ (1942–2012)
15. 第15代ラウドン伯爵サイモン・マイケル・アブニー＝ヘイスティングズ (1974-)

参考文献

Cokayne, George Edward 編（英語）『Complete peerage of England, Scotland, Ireland, Great Britain and the United Kingdom, extant, extinct or dormant (L to M)』 5巻（1st）、George Bell & Sons、London、1893年。https://archive.org/details/completepeerage01cokagoog/page/n162。

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