ヘイスティングズ侯爵

ヘイスティングズ侯爵について

ヘイスティングズ侯爵（Marquess of Hastings）は、かつて存在した連合王国貴族の侯爵位です。1816年に第2代モイラ伯爵フランシス・ロードン＝ヘイスティングズが叙爵されたことに始まりますが、4代目のヘンリー・ロードン＝ヘイスティングズが1868年に後継者なく亡くなったことで、その歴史に幕を閉じました。

ヘイスティングズ侯爵家の歴史

ヘイスティングズ侯爵家の歴史は、ウェスト・ヨークシャーのロードン・ホールを拠点とした地主フランシス・ロードンに始まります。その息子ジョージ・ロードンは、軍人として、またアイルランド議会の議員として活躍しました。彼はダウン県モイラの町を建設し、居を構えます。イングランド内戦ではアイルランドの反乱鎮圧に貢献し、王政復古を支援した功績により、1665年にアイルランド準男爵の爵位を授与されました。

ジョージ・ロードンの曾孫である4代準男爵サー・ジョン・ロードンは、1750年にアイルランド貴族爵位であるロードン男爵に、1762年にはモイラ伯爵に叙爵されました。その息子で2代モイラ伯を継承したフランシス・ロードンは、軍人、アイルランド議会議員として活躍する一方で、1783年にグレートブリテン貴族であるロードン男爵に叙爵され、イギリス議会の貴族院議員となりました。1790年には母方の姓であるヘイスティングズを加え、ロードン＝ヘイスティングズに改姓。1794年には父の死によりモイラ伯爵を襲爵し、1808年には母の死により、ヘイスティングズ男爵、ハンガーフォードのヘイスティングズ男爵、ボトリー男爵、ハンガーフォード男爵、モリンズ男爵といったイングランド貴族の爵位を継承しました。

フランシス・ロードン＝ヘイスティングズは1813年にインド総督に就任。グルカ戦争での勝利という功績が認められ、1816年12月6日に連合王国貴族ヘイスティングズ侯爵、ロードン伯爵、ロードン子爵に叙爵されました。さらに、第三次マラータ戦争での勝利によって、インド全土におけるイギリスの覇権を確立しました。

初代侯爵の死後、長男のジョージ・ロードン＝ヘイスティングズが2代侯爵を継承しました。彼は1840年に母からスコットランド貴族爵位であるラウドン伯爵位を継承し、イングランド、スコットランド、グレートブリテン、アイルランド、連合王国の5種類の爵位を保有することとなりました。

2代侯爵の死後、長男のポーリン・ロードン＝ヘイスティングズが3代侯爵となりましたが、子供がなく若くして死去しました。そのため、弟のヘンリー・ロードン＝ヘイスティングズが4代侯爵を継承しました。彼は1858年に母からイングランド貴族爵位のルシンのグレイ男爵を継承しましたが、彼もまた子供を残さずに亡くなったため、ヘイスティングズ侯爵、モイラ伯爵、ロードン伯爵、ロードン子爵、二つのロードン男爵位、準男爵位は廃絶しました。スコットランド貴族のラウドン伯爵位などは、3代侯爵の妹、4代侯爵の姉にあたるエディスに継承されました。また、イングランドの男爵位は、4人の姉妹の間で継承者が決定できず、停止状態となりました。

歴代当主

以下に歴代の当主をまとめます。

（モイラのロードン）準男爵 (1665年)

初代準男爵 サー・ジョージ・ロードン (Sir George Rawdon, 1604–1684)
2代準男爵 サー・アーサー・ロードン (Sir Arthur Rawdon, 1662–1695) 初代の息子
3代準男爵 サー・ジョン・ロードン (Sir John Rawdon, 1690–1724) 2代目の息子
4代準男爵 サー・ジョン・ロードン (Sir John Rawdon, 1720–1793) 3代目の息子。1750年にロードン男爵、1762年にモイラ伯爵に叙爵

モイラ伯爵 (1762年)

初代モイラ伯 ジョン・ロードン (John Rawdon, 1720–1793)
2代モイラ伯 フランシス・ロードン＝ヘイスティングズ (Francis Rawdon-Hastings, 1754–1826) 初代の息子。1816年にヘイスディングズ侯爵に叙爵

ヘイスティングズ侯爵 (1816年)

初代ヘイスティングズ侯 フランシス・ロードン＝ヘイスティングズ (Francis Rawdon-Hastings, 1754–1826)
2代ヘイスティングズ侯 ジョージ・オーガスタス・フランシス・ロードン＝ヘイスティングズ (George Augustus Francis Rawdon-Hastings, 1808–1844) 初代の息子
3代ヘイスティングズ侯 ポーリン・レジナルド・セルロ・ロードン＝ヘイスティングズ (Paulyn Reginald Serlo Rawdon-Hastings, 1832-1851) 2代目の息子
4代ヘイスティングズ侯 ヘンリー・ウェイズフォード・チャールズ・プランタジネット・ロードン＝ヘイスティングズ (Henry Weysford Charles Plantagenet Rawdon-Hastings, 1842–1868) 2代目の弟

まとめ

ヘイスティングズ侯爵は、インド総督を務めた初代侯爵の功績によって創設されましたが、後継者に恵まれず短期間で廃絶した爵位です。その歴史は、ロードン家、そしてヘイスティングズ家の歴史と深く結びついており、イギリス貴族の複雑な爵位継承の一例として知られています。

参考資料

* 浜渦哲雄『大英帝国インド総督列伝 イギリスはいかにインドを統治したか』中央公論新社、1999年

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