ラザロの復活 (カラヴァッジョ)

ラザロの復活

カラヴァッジョの『ラザロの復活』は、1609年頃に制作されたバロック絵画の傑作です。この作品は、聖書に記されたラザロの蘇生という奇跡を、劇的な光と影のコントラストを用いて描いています。現在、メッシーナ州立美術館に所蔵されています。

制作の背景

1608年、カラヴァッジョはマルタでの騒動後、シチリア島へと逃れました。そこで、友人である芸術家マリオ・ミンニーティの仲介により、メッシーナのパードリ・クロチーフェリ教会からの依頼を受け、この作品を制作することになります。この絵は、裕福な商人ジョヴァンニ・バッティスタ・デ・ラッザーリによって教会に寄贈されました。彼は聖ラザロを自身の守護聖人としており、そのことがこの作品の制作を促したと考えられています。

作品の特徴

この絵では、ラザロが病に倒れ、死んで埋葬された後、キリストによって蘇生される場面が描かれています。カラヴァッジョは、聖書の物語を独自の解釈で再構成し、そのドラマ性を強調しています。背景には、人物たちを圧倒するような空白の壁が広がり、登場人物たちの感情や動きをより際立たせています。特に、ラザロの腕の表現は印象的で、片方の手は状況を受け入れるように開き、もう片方の手はキリストに向かって伸びています。これは、ラザロの蘇生に対する希望や、救いを求める心情を象徴していると解釈できます。

光の使い方も非常に効果的です。光はドラマの重要な要素であり、ラザロの手や見物人の表情など、重要な部分を照らし出しています。これにより、観る者は絵画の持つ感情的なインパクトをより深く感じることができます。また、この作品は、カラヴァッジョの他の作品と比較して、人物群の相互作用がより重視されており、集団的な動作と感情の表現が特徴的です。

制作にまつわる逸話

カラヴァッジョがこの絵を描くために、新たに埋葬された遺体を掘り起こしたという噂がありますが、これは作り話である可能性が高いとされています。しかし、ラザロの遺体は、まるで十字架の像のように描かれており、クロチーフェリ教会が所有していた木彫りの十字架像を参考にしているという説もあります。また、一部の人物は、当時の地域の人々をモデルにしていると考えられています。

全体的な構図はジュリオ・ロマーノの版画に影響を受けており、キリストの姿は彼の初期の作品『聖マタイの召命』のキリストを反転させたものとされています。キリストの顔は暗く塗りつぶされ、人々は背後の光に向いているように見えます。これは、神聖な存在と人間の対比を表現しているのかもしれません。絵のタッチは荒々しく、画家の不安な心理状態を反映しているようにも感じられます。

作品の状態と評価

『ラザロの復活』は、保存状態があまり良くなく、多くの修復が施されています。一部の箇所は、カラヴァッジョの助手によって描かれた可能性も指摘されています。フランチェスコ・スジンノによると、カラヴァッジョは最初のバージョンを制作しましたが、不評だったためカミソリで破壊し、現在のバージョンを短期間で完成させたとされています。しかし、この話は作り話である可能性も高いとされています。この作品は、カラヴァッジョの独特な作風と、聖書の物語をドラマチックに描く手法を象徴する作品として、今日でも高く評価されています。

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