ラシ (学者)

ラシ（Rashi、1040年2月22日 - 1105年7月13日）は、中世フランスで活躍した著名なユダヤ教ラビであり、学者です。本名はシュローモー・イツハーキー（רבי שלמה יצחקי）といいます。

生涯

ラシは1040年、フランス北部のシャンパーニュ地方、トロワで生まれました。5歳から父親を主な師としてトーラー（モーセ五書）を学び始めます。幼くして父親を亡くした後、ドイツのウォルムスにあるイェシーバー（ユダヤ教の高等教育機関）で研鑽を積みました。さらに、同じくドイツのマインツにあるイェシーバーにも通い、知識を深めました。17歳で結婚し、3人の娘を授かります。

25歳頃、故郷のトロワに戻り、ラビ法廷（ベート・ディーン）の一員として活動を始め、ハラーハー（ユダヤ法の解釈と適用）の分野で注解を行いました。1070年には弟子たちを集め、イェシーバーを開校しました。このイェシーバーは瞬く間に発展し、トロワはユダヤ教研究における重要な拠点、中心地となりました。1096年には、第1回十字軍の襲撃という衝撃的な出来事を経験しています。1105年、ラシは故郷トロワで生涯を閉じました。

業績と影響

ラシの最大の功績は、ヘブライ語聖書（タナハ）とタルムードに対する鋭く明晰な注解です。彼の注解は、難解な箇所を平易な言葉で解説し、文法的な分析や歴史的な背景を考慮に入れることで、テキストの理解を深めることに貢献しました。ラシの注解は、後の世代の学者たちに多大な影響を与え、数多くのトサフィスト（タルムード注解者）を生み出す原動力となりました。

ラシの注解は、その明快さと分かりやすさから、ユダヤ教徒の間で広く受け入れられ、今日に至るまで、聖書やタルムードの学習に欠かせないものとなっています。彼の注解は、単なる学術的な研究にとどまらず、ユダヤ教の信仰と実践に深く根ざしたものであり、多くの人々に霊的なインスピレーションを与え続けています。

ラシの注解は、ヘブライ語だけでなく、中世フランス語（古フランス語）の貴重な資料としても評価されています。彼の注解には、当時の日常生活や文化に関する情報が豊富に含まれており、歴史学や言語学の研究にとっても重要な資料となっています。

ラシは、単なる学者や注解者にとどまらず、ユダヤ教の精神的な指導者であり、共同体の模範となる存在でした。彼の生涯と業績は、ユダヤ教の歴史において重要な位置を占めており、今日でも多くの人々に敬愛されています。

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