ラジオアストロン

スペクトルR（Spektr-R）、またはラジオアストロン（RadioAstron）は、ロシア宇宙科学センター（Russian Astro Space Center）が資金を提供し、開発された電波天文衛星です。この衛星は、2011年7月18日にゼニット3SLBFロケットによって打ち上げられ、近地点10,000km、遠地点390,000kmの地球周回軌道に投入されました。

スペクトルRの最大の特徴は、直径10mの展開式アンテナです。この巨大なアンテナにより、従来の電波望遠鏡では到達できなかった非常に高い角解像度での観測が可能となりました。その目標は、100万分の1秒角という前例のない高解像度で天体を観測し、宇宙の構造や現象を詳細に解明することです。

この衛星は、軌道上重量が3,295kgにも及ぶ大型衛星であり、フレガートSB上段ロケットを搭載したゼニット3SLBFロケットによって打ち上げられました。フレガートSB上段ロケットは、衛星を正確な軌道に投入する役割を担いました。スペクトルRの10mの電波望遠鏡は、日本の宇宙電波望遠鏡「はるか」の有効径8mを上回り、宇宙空間に設置された電波望遠鏡としては世界最大とされ、2014年2月にはギネス世界記録に認定されました。

スペクトルRの観測成果は、天文学研究に大きな進歩をもたらすと期待されています。高解像度での観測により、遠く離れた銀河の中心にある活動銀河核や、ブラックホールの周辺領域、さらには星形成領域の詳細な構造を明らかにすることが可能になると考えられています。また、宇宙マイクロ波背景放射の精密観測など、宇宙論分野への貢献も期待されています。

このプロジェクトの後継として、サブミリ波、ミリ波領域の観測を行うスペクトルMが計画されており、2025年の打ち上げを目指して開発が進められています。スペクトルMは、スペクトルRの観測をさらに補完し、宇宙の謎解明に貢献することが期待されています。

スペクトルRは、宇宙電波観測における新たな地平を切り開いた画期的なプロジェクトです。その巨大なアンテナと高解像度観測能力は、天文学の分野に大きな変革をもたらし、今後の宇宙研究の発展に重要な役割を果たすでしょう。

関連情報として、ラジオアストロンプロジェクトのホームページ（英語ページ）やRussian SpacewebのSpectr-Rページでは、より詳細な情報が提供されています。

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