ラジオ体操のうた

『ラジオ体操のうた』は、日本の国民的健康習慣であるNHKの『ラジオ体操』において、その開始を告げるテーマソングとして広く知られています。この楽曲は、時代と共に変遷を遂げ、現在までに三つの異なるバージョンが存在します。

初代：昭和初期の誕生

最初の『ラジオ体操のうた』は、1931年（昭和6年）7月に世に送り出されました。作詞は小川孝敏、作曲は堀内敬三が担当しています。同年に日本ビクターからシングル盤がリリースされており、収録曲には歌唱入りの「ラジオ体操の歌」（歌：内田栄一、演奏：日本ビクター管絃楽団）と、号令に合わせて体操を行うための「ラジオ体操」（演奏：日本ビクター管絃楽団、号令：江木理一）が含まれていました。

二代目：戦後復興とともに

戦後、新たな時代を迎えた1951年（昭和26年）9月、二代目の『ラジオ体操の歌』が発表されました。このバージョンは、脇太一が作詞を、大中恩が作曲を手がけました。シングル盤には、藤山一郎とコロムビア合唱団による歌唱版（演奏：コロムビアオーケストラ）と、新ラジオ体操用の楽曲（作曲：服部正、ピアノ：丹生健夫）が収められています。

三代目：長寿のスタンダード

そして1956年（昭和31年）9月に発表されたのが、現在に至るまで半世紀以上にわたり使用されている三代目の『ラジオ体操のうた』です。作詞は藤浦洸、作曲は後に歌手としても知られる藤山一郎が担当しました。このバージョンは、国民的な楽曲として定着し、多くの人々の朝を彩っています。特に、早朝の放送では茨木市立北中学校の合唱によるバージョンが流れるのが特徴です。

三代目の楽曲は、番組のテーマソングとしてだけでなく、様々な場面で活用されています。1958年（昭和33年）6月には、藤山一郎自身の歌唱によるシングル盤が日本コロムビアから発売されました。

番組外での広がり

この三代目『ラジオ体操のうた』は、そのキャッチーさと国民的な認知度から、ラジオ体操の枠を超えて使用される機会が多くあります。CMソングとして、歌詞の一部を替え歌にするなどアレンジされた形で頻繁に登場します。具体的な例としては、以下のようなものがあります。

2013年 カゴメ「野菜生活100」のCM（奇妙礼太郎が歌唱）
2019年 カルビー「フルグラ」のCM（替え歌を使用）
2020年 ダイハツ「新型タフト」のCM（替え歌を使用）
2020年 養命酒製造「養命酒」のCM（草刈正雄が歌詞の一部を朗読）
2022年 かんぽ生命保険のCM（替え歌を使用）
2023年 マクドナルド「朝マック」のCM（替え歌を使用）

また、映画やテレビドラマといったメディア作品でも使用されています。

アニメ及び実写映画『GANTZ』（2004年・2011年）
土曜ドラマ『みかづき』（2019年、替え歌を使用）

さらに、多くのアーティストによってカバーもされており、東京放送児童合唱団によるバージョンなどが存在します。

このように、『ラジオ体操のうた』、特に三代目バージョンは、単なる体操の伴奏曲としてだけでなく、日本の社会や文化の中に深く根差した楽曲として、多様な形で親しまれ続けています。

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