ラスカルズ

ラスカルズ (The Rascals)

1964年、アメリカ合衆国ニューヨークで産声を上げたラスカルズは、その魂を揺さぶるサウンドで1960年代後半の音楽シーンを席巻した、屈指のブルー・アイド・ソウル・グループである。結成当初は「ヤング・ラスカルズ」として活動を開始したが、1968年に発表されたアルバム『夢みる若者』を機にバンド名をシンプルに「ラスカルズ」と改称した。

彼らの黄金期は1965年から1969年にかけて訪れる。この間に全米チャートのトップ40圏内に13曲もの楽曲を送り込み、圧倒的な人気を獲得した。特に、「Good Lovin'」（1966年）、「Groovin'」（1967年）、「People Got to Be Free (自由への讃歌)」（1968年）といった楽曲は、ビルボードのシングルチャートで第1位に輝くなど、当時のアメリカ音楽界において彼らの存在感を示すものとなった。その音楽性は、ゴスペルやR&Bを基盤としながら、ポップスの要素を巧みに融合させ、白人バンドによるソウルミュージックという独自のスタイルを確立。彼らの生み出すグルーヴ感あふれる楽曲は、多くの聴衆を魅了した。

中心メンバーは、フェリックス・キャヴァリエ（リードボーカル、オルガン、ピアノ）、エディ・ブリガッティ（リードボーカル、パーカッション）、ジーン・コーニッシュ（ギター）、ディノ・ダネリ（ドラムス、パーカッション）の4人であった。イタリア系アメリカ人であるキャヴァリエ、ブリガッティ、ダネリと、フランス系カナダ人であるコーニッシュという多文化的なルーツを持つ彼らの融合が、ラスカルズ独自のサウンドを生み出す源泉となったとも言えるだろう。

しかし、栄光の時期は長く続かなかった。1970年、アルバム『ラスト・アルバム』の制作中に、リードボーカルのエディ・ブリガッティがバンドを脱退。さらに1971年には、そのアルバムのリリース後にギタリストのジーン・コーニッシュもグループを離れることを決意した。主要なソングライターでありボーカリストでもあったブリガッティ、そしてギタリストのコーニッシュの脱退は、バンドにとって大きな痛手となった。

残されたフェリックス・キャヴァリエとディノ・ダネリの二人は、活動継続のため再編成を決断する。彼らは所属レーベルをアトランティックからコロムビア・レコードへと移籍。新たなメンバーとして、高い演奏技術を持つギタリストのバジー・フェイトン、女性コーラスとしてアニー・サットンとモリー・ホルト、そして黒人ベーシストのロバート・ポップウエルを迎え入れ、6人編成というそれまでの形態とは異なる布陣で再出発を図った。1971年5月に発表されたアルバム『ピースフル・ワールド』をもって新体制での活動を開始したが、時代の流れや相次ぐメンバーチェンジの影響もあり、かつてのような絶大な人気を取り戻すことは叶わなかった。結局、ラスカルズは翌年の1972年にその活動に終止符を打つこととなった。

バンド解散後も、その音楽的遺産は高く評価され続けた。そして1997年には、ロックンロールの殿堂入りを果たし、その功績が改めて認められることとなった。

ラスカルズの音楽は、海を越えて日本の音楽シーンにも大きな影響を与えている。特に、日本の人気ミュージシャンである浜田省吾や山下達郎は、彼らから深いインスピレーションを受けたと語っている。山下達郎に至っては、ラスカルズを常々自身の「アイドル」と称しており、彼らの楽曲やスタイルが日本のシティ・ポップやAORといったジャンルにも間接的に影響を与えた可能性が指摘されている。

一時はアメリカを代表する人気バンドとして時代を駆け抜けたラスカルズ。短命に終わった再編成後の活動期間や、メンバーの変遷はあったものの、彼らが残した数々のヒット曲や、ブルー・アイド・ソウルというジャンルにおけるパイオニアとしての功績は、今なお色褪せることなく、多くの音楽ファンに聴き継がれている。彼らの奏でたソウルフルでポップなサウンドは、時代を超えて響き続けているのである。

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