ラストレター (映画)

映画『ラストレター』：手紙が紡ぐ、過去と未来の物語

2020年1月17日に公開された日本映画『ラストレター』は、岩井俊二監督による同名小説を原作とする感動作です。主演を務めたのは、数々の名作に出演し高い演技力を誇る松たか子。主題歌は、透明感あふれる歌声で聴く者を魅了するシンガーソングライターの森七菜が担当しました。

本作は、岩井俊二監督の故郷である宮城県を舞台に、手紙というアナログなコミュニケーションツールを通じて、過去と現在、そして様々な人間関係が複雑に絡み合う物語を描いています。

企画・制作：韓国発のショートムービーから生まれた長編

『ラストレター』の企画は、2017年に岩井俊二監督がペ・ドゥナを主演に韓国で制作したショートムービー『チャンオクの手紙』から始まりました。このショートムービーを長編映画にしたらどうなるかという発想から、本作の企画開発が始まったのです。

岩井監督は、日本、中国、韓国でそれぞれ異なるバージョンの映画を作るというアイデアを思いつき、まず中国で『チィファの手紙』として映画化されました。その後、小説版『ラストレター』が出版され、そして2020年に日本版が公開されるという経緯を辿っています。

日本版『ラストレター』は、岩井俊二監督にとって初の宮城県を舞台とした作品であり、監督自身の原体験が色濃く反映されています。さらに、監督の代表作である『Love Letter』に対するアンサー映画としての側面も持ち合わせています。撮影は2018年夏に、主に仙台市と白石市で行われました。

岩井監督自身も、「SNS全盛の現代において、手紙を使った物語は不可能だと考えていましたが、ある日、それを可能にするアイデアを思いついたことが、この物語の始まりでした」と語っています。

主題歌：森七菜の瑞々しい歌声

主題歌の選考は、多くのアーティストが候補に挙がる中、撮影中に監督がカラオケで森七菜の歌声を聴いたことがきっかけでした。その場で、監督は森七菜に主題歌を歌ってもらうことを決断しました。

企画・プロデュースを担当した川村元気氏は、森七菜の歌声について「少年と少女の間をたゆたうような瑞々しさと、誰にも真似できない力強さがあった」と評しています。主題歌「カエルノウタ」は、岩井俊二監督が作詞、小林武史が作曲を担当しました。

あらすじ：複雑に絡み合う人間関係と未解決の過去

物語は、宮城県白石市で姉・遠野未咲のお弔いが行われる場面から始まります。44歳という若さで亡くなった未咲ですが、その死の真相は自殺でした。妹である裕里は、未咲の娘・鮎美から同窓会のお知らせを受け取ります。

同窓会に赴いた裕里は、姉と間違えられ、スピーチまですることになります。そこで、高校時代の同級生である乙坂鏡史郎と再会し、連絡先を交換します。鏡史郎から届いた「25年間、ずっと愛していました」というメッセージに、戸惑う裕里。

夫の宗二郎は、鏡史郎からのメッセージを浮気の証拠だと勘違いし、スマホを壊してしまいます。裕里は、鏡史郎に手紙で事情を説明しますが、宛先を未咲の名前で送ります。

その後、様々な出来事が重なり、鮎美と颯香が鏡史郎への返事を書き始めます。鏡史郎は、高校時代の未咲への想いを手紙に綴り、様々な人物との交流を通して、過去と現在が交錯する物語が展開していきます。

最終的に、鏡史郎は未咲の死の真相を知り、過去の未解決な問題と向き合います。そして、裕里との出会い、そして姉への未練を乗り越える姿が描かれます。

キャストとスタッフ：豪華な顔ぶれ

本作には、松たか子、福山雅治、広瀬すず、森七菜など、実力派俳優陣が出演しています。監督・脚本・編集は岩井俊二、音楽は小林武史と、制作陣も豪華な顔ぶれです。

受賞歴：多くの映画賞を受賞

『ラストレター』は、多くの映画賞を受賞しており、その高い評価が伺えます。森七菜は新人賞を複数受賞し、福山雅治も最優秀男優賞を受賞しました。

まとめ：手紙を通して描かれる、感動の人間ドラマ

『ラストレター』は、手紙という古風なコミュニケーションツールを現代的な視点で捉え、複雑な人間関係や未解決の過去を繊細に描き出した、感動的な人間ドラマです。登場人物それぞれの想いが交錯し、観る者の心に深く響く、忘れ難い作品となっています。

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