ラス・メドゥラス

ラス・メドゥラスは、スペインのカスティーリャ・イ・レオン州、ポンフェラーダ近郊に広がる、かつての金鉱山跡です。この場所は、ローマ帝国時代に最盛期を迎え、大規模な金採掘が行われた場所として知られています。現在では、その特異な景観が注目され、1997年にユネスコの世界遺産に登録されました。

ラス・メドゥラスの概要

ラス・メドゥラスは東西4km、南北5kmの範囲に広がり、約1500万年前の河川の堆積によって形成された地層の上に位置しています。この地での金の採取は、ローマ人が到来する以前から行われており、地元の住民は川から砂[[金]]を採取し、装飾品などに加工していました。紀元前4世紀頃には、美しい首飾りや耳飾りが作られていたことが、発掘調査で明らかになっています。

ローマ帝国がこの地域を支配下に置いたのは、紀元前25年のことです。初代皇帝アウグストゥスは、この地域をヒスパニア・タッラコネンシスと名付け、大規模な金採掘を始めました。この時、ローマ人は「ルイナ・モンティウム」という特殊な技術を用いました。これは、大量の水を山に流し込み、その水の力で土砂を押し流す採掘方法です。この技術は、ローマ水道の技術を応用したもので、約35km離れた場所など、少なくとも7つの水源から水を引いて、山頂の貯水池に溜め、そこから地下水路を通して一気に流し込み、山の斜面を計画的に崩壊させるというものでした。この採掘方法は200年以上も繰り返され、平坦だった台地が、現在のような複雑な地形へと変化しました。

崩壊した土砂は川となって麓に流れ込み、人々はそこから砂[[金]]を採取しました。この方法は、カリフォルニアのゴールドラッシュ時代に行われた水力採掘の先駆けとも言えます。

プリニウスの記述によれば、ラス・メドゥラスでは毎年2万ポンドもの金が産出されていたとされています。この金採掘は、6万人もの労働者を動員し、250年間で165万kgもの金を産出したとされています。金の含有量は、土砂1トンあたりおよそ3gだったと推定されています。

ローマ帝国の掠奪と貢献

ラス・メドゥラスの金は、ローマ帝国によって根こそぎ持ち去られましたが、その一方で、ローマ帝国の土木技術や文化がもたらされました。周辺の都市ではインフラが整備され、モザイク建築や壁画の文化、様々な肉の保存食文化などが伝えられました。また、現在ラス・メドゥラス一帯に繁茂する栗の木は、ローマ帝国が鉱山労働者の食料を確保するために植えたことが起源であるとされています。この栗の木は、ローマ人が去った後の人々の暮らしを支え、地形の崩壊を防ぐ役割も果たしてきました。

年表

1500万年前頃：地層が形成される
紀元前4世紀頃：砂[[金]]採取が始まる
紀元前25年：ローマ帝国がイベリア半島北部を征服し、ラス・メドゥラスでの大規模な採掘が始まる
77年：大プリニウスがラス・メドゥラスについて著述
4世紀：金鉱が枯渇
1996年: スペインの文化遺産に指定
1997年: ユネスコ世界遺産に登録
2002年: スペインの天然記念物に指定

ユネスコ世界遺産としての登録基準

ラス・メドゥラスは、以下の世界遺産登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3) 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠であること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例であること。

ラス・メドゥラスは、古代ローマの技術力と、その後の歴史を物語る貴重な遺産であり、世界中の人々を魅了しています。

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