ラック (ビリヤード)

ポケットビリヤードのラック：的球の配置と安定性

ポケットビリヤードにおいて、ラックはゲーム開始前に的球を所定の形に並べるための枠です。一般的には木材や合成樹脂で作られており、15個すべてのボールを並べる三角形のラックが最も一般的ですが、9個のボール用の菱形ラックや7個のボール用の六角形ラックなども存在します。ラックは、的球を並べた状態、そしてその配置を作る行為の両方を指すこともあります。ゲーム開始からラックのボールをすべて取り切るまでを1ラックと数えることもあります。なお、類似した概念として、スヌーカーのレッドボールの塊はパックと呼ばれます。

ボールを密着させる工夫

ブレイクショットでは、的球をテーブル全体に散らす必要があります。そのため、ラックを組む際には、ボール同士を可能な限り密着させることが重要です。しかし、ラシャ面の凹凸などにより、ボールが完全に密着しない場合があります。この問題を解決するために、様々な工夫が凝らされたラックが開発されています。

サルド・タイト・ラック

ロウ・サルド氏によって考案されたこのラックは、上から加圧してボールをラシャに押し付けることで、ボール同士を密着させます。ラシャの状態を整えるための専用工具も付属しており、USオープンなどの大会でも使用されています。

ラック・スポット・シール

これは、ドーナツ状のシールをラシャに貼り付け、その上にボールを置くことでボールの位置を固定する画期的なアイデア商品です。シールをボールの規格サイズ間隔で並べて貼り付けることで、ボール同士を簡単に密着させることができます。日本人が開発し、特に9個のボール（ナインボール）用のものが市販されています。パンチ穴補強シールを代用することも可能で、必要に応じてボールの個数に合わせてシールを使用できます。

ソリッド・ラック・シート

これも日本人が開発したナインボール用のラックで、9個のボールをまとめて固定するダイヤモンド型のスポットシートです。ラシャとの段差を利用してボールを内側に押し付けることで、密着した状態を保ちます。シートは非常に薄く作られており、ボールの挙動への影響を最小限に抑えています。ブレイク後、シートが邪魔になる場合は取り除かれます。

マルチ・ラック・シート

ラックの外周のボールを固定するために、ダイヤモンド型に穴が開けられたシートです。ボールを穴の上に置くことで位置を固定し、密着したラックを作ることができます。後に、11個と15個のボールに対応したシートも発売されました。

その他のラック

マガジン・ラック

ブレイクショットの練習に用いられる、5～6cm程度の厚さに積まれた雑誌の塊です。ページがめくれないようにガムテープなどで固定します。手球と垂直に置き、ショットの精度やパワーをチェックするために使用されます。ラック・スポット・シールを使用するテーブルでは、シールが剥がれる可能性があるため、ヘッド側ではなくフット側からショットすることが推奨されます。

キュー・ラック

これは、キューを立てるための棚（キュー立て）であり、本稿で説明するラックとは全く異なるものです。

まとめ

ポケットビリヤードのラックは、ゲームの開始をスムーズに行うための重要なツールです。様々な工夫が凝らされたラックが登場しており、プレーヤーは自分のプレイスタイルや好みに合わせて最適なラックを選択することができます。

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