ラテンアメリカ研究

ラテンアメリカ研究の概要

ラテンアメリカ研究（Latin American studies）は、異文化社会の理解を深めるために発展した地域研究の一分野であり、主にラテンアメリカに関する学問です。特に歴史、文化、社会、経済などのさまざまな側面が研究されています。この分野は、グローバルな視点でラテンアメリカを理解し、他地域との関係性を探る重要な役割を持っています。

アメリカ合衆国におけるラテンアメリカ研究

アメリカでは、ラテンアメリカ研究が1960年代以降飛躍的に発展しました。初期の取り組みとして、1918年に『Hispanic American Historical Review』が創刊され、この分野の研究が始まっていました。しかし、冷戦の影響を受けて、ラテンアメリカとソ連の関係が懸念されたことから、アメリカは大学でのラテンアメリカ関連講座を充実させ、研究センターへの資金援助を強化しました。この結果、研究環境は大きく向上しました。

テキサス大学は特に有名で、60万冊以上のラテンアメリカ関連書籍を所有しており、世界的に重要な研究センターとして知られています。他にも、ピッツバーグ大学やワシントンの議会図書館、コロンブス記念図書館などが代表的な研究機関として存在します。これらの機関は、ラテンアメリカ研究を支える重要な役割を果たしています。

ラテンアメリカ諸国の研究状況

ラテンアメリカ諸国では、現地の特性を活かした深い研究が進められています。しかし、これは欧米諸国に比べると活動量が少なく、学問環境の整備も不十分です。各国の大学や研究所では自国の歴史や社会に関する研究が行われていますが、全体を対象とする研究拠点はメキシコ、ベネズエラ、ブラジルの3か国のみが有しています。

メキシコ国立自治大学のラテンアメリカ研究センターは1960年に設立され、地域最大の研究機関として知られています。ベネズエラでは1970年代に複数の研究センターが設立され、ブラジルには財団があり、国内外で高い評価を受けています。

日本におけるラテンアメリカ研究

日本のラテンアメリカ研究は、欧米国と比較して歴史が浅いのが特徴です。最初の国交樹立は1872年にペルーとの間であり、次いで1888年にはメキシコと平等条約を締結しました。このように、移民政策としての関係がおもに強調され、ラテンアメリカの歴史や経済に関する研究が進められています。1941年に神戸高等商業学校が設置した中南米経済調査室が最古の研究機関です。

戦後、ラテンアメリカは日本にとって重要な市場となり、この地域への関心が高まりました。1958年には日本ラテンアメリカ協会が設立され、さらにアジア経済研究所での研究が始まります。学会の設立も進み、もともと存在していた大学に加え、上智大学や筑波大学、東京外国語大学などがラテンアメリカ研究の場となっています。

ヨーロッパにおけるラテンアメリカ研究

ヨーロッパでは、植民地時代からラテンアメリカ研究が続けられてきましたが、アメリカのような大規模な研究センターは存在しません。スペインやポルトガルのほか、オランダ、イギリス、フランス、ドイツにも重要な研究機関があります。古文書館や資料室には貴重な文献が保管されており、管理も行き届いています。

特に規模が大きいのは、1930年に設立されたベルリンのイベロアメリカ研究所で、約50万冊の資源があります。また、マドリードのイスパニア文化研究所や、セビリアのインディアス総合古文書館も重要な役割を果たしています。

以上のように、ラテンアメリカ研究は地域によって異なる特性を持っていますが、それぞれの地域の歴史や文化、経済を理解する上で欠かせない学問です。

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