ラディトール

ラディトール：放射線偽医療の象徴

ラディトールは、かつてアメリカ合衆国で販売されていた特許薬であり、放射線偽医療の代表例として知られています。この薬は、放射線ホルミシスの原理を疑似科学的に過度に応用したもので、その危険性を示す事例として歴史に名を残しました。

ラディトールの組成と宣伝文句

ラディトールは、3回蒸留された蒸留水に、ラジウム226と228をそれぞれ最低1マイクロキュリー（37キロベクレル）含むというものでした。ベイリー・ラジウム・ラボラトリーズ社によって製造され、「生ける屍の治療法」や「永久の快活」といった魅力的な宣伝文句で販売されました。特に、勃起不全に効果があるとされ、高額ながらも多くの人々が購入しました。

エベン・バイヤーズの悲劇

実業家であり、アマチュアゴルファーでもあったエベン・バイヤーズは、ラディトールの熱心な愛用者でした。しかし、彼は1932年にラジウム中毒で死亡し、その悲劇がラディトールの終焉につながりました。バイヤーズは鉛で裏打ちされた棺に埋葬され、1965年に墓が掘り起こされた際には、彼の体内から225,000ベクレルもの放射能が検出されました。これは、一般的な人体内のカリウム40の放射能（約4,400ベクレル）をはるかに上回る数値です。

規制強化への転換点

バイヤーズの死は、アメリカ食品医薬品局（FDA）の権限強化のきっかけとなり、放射性物質を含む特許薬の規制が強化されることになりました。ウォール・ストリート・ジャーナルは、彼の悲劇を「ラジウム水はよく効いた、彼の顎が腐り果てるまで」という衝撃的な見出しで報道し、社会に大きな衝撃を与えました。

ラディトールの教訓

ラディトールの歴史は、放射線ホルミシスの安易な応用がいかに危険であるかを示す教訓です。この事件を契機に、医薬品や放射性製品の規制管理が強化され、人々の健康と安全を守るための重要な一歩となりました。

関連項目

ラジウム鉱石リヴィゲーター
放射線偽医療

外部リンク

Radithor at the Oak Ridge Associated Universities Health Physics Historical Instrumentation Museum Collection
Theodore Gray's Periodic Table of Elements
* Promotional article in Deseret News, 26 Feb 1909

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