ラドヴァン・カラジッチ

ラドヴァン・カラジッチ：紛争と逃亡、そして裁判

ラドヴァン・カラジッチ（Radovan Karadžić）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争において、セルビア人勢力であるスルプスカ共和国の大統領を務めた人物です。精神科医、詩人という顔も持っていました。

生い立ちと初期の活動

1945年、モンテネグロのセルビア人家庭に生まれたカラジッチは、サラエヴォ大学で精神医学を学びました。コロンビア大学での研修後、精神科医として勤務する傍ら、詩人としても活動。セルビア人作家の勧めにより、政治に関わるようになります。

政治家として

1989年、セルビア民主党の設立メンバーとなり、ユーゴスラビアからの独立に反対するセルビア人勢力をまとめようと活動しました。1992年にはスルプスカ共和国の独立を宣言し、大統領に就任。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を主導しました。

紛争中、カラジッチはセルビア人至上主義を掲げ、ボシュニャク人やクロアチア人に対する民族浄化を指示したとされています。特に1995年のスレブレニツァの虐殺における彼の役割は、国際社会から強く非難されました。

逃亡、逮捕、そして裁判

紛争終結後、カラジッチは旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）から戦争犯罪者として指名手配されました。10年以上にわたる逃亡生活の後、2008年にベオグラードで逮捕されました。

逮捕時、カラジッチは「ドラガン・ダビッド・ダビッチ」という偽名で代替医療の診療を行っていました。その変貌ぶりは世界を驚かせました。

ICTYでの裁判では、ジェノサイド、人道に対する罪など、多くの罪状で起訴されました。当初、彼は弁護士を立てずに自ら弁護を行いましたが、最終的には法廷が選任した弁護士によって弁護されました。

2016年、一審で禁錮40年の判決が言い渡されましたが、2019年の上訴審で終身刑が確定しました。カラジッチは一貫して無罪を主張しましたが、法廷は彼の責任を認めました。

現在

カラジッチは現在、イギリスの刑務所で服役しています。彼の行為は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の深い傷跡として、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

関連項目

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争
スルプスカ共和国
旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷
ラトコ・ムラディッチ

関連作品

映画『カルラのリスト』
映画『ハンティング・パーティ』

ラドヴァン・カラジッチの生涯は、政治的野心、民族間の対立、そして戦争の悲劇を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

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