ラナース

デンマークの交易都市ラナース：歴史と文化、そして自然

デンマーク、ユトランド半島北東部に位置するラナースは、人口約6万人を擁する同国第6の都市です。カテガット海峡に繋がるラナース・フィヨルドの奥、グゼノー川河畔に広がるこの都市は、古くから恵まれた地理的条件によって栄えてきました。天然の良港は、交易の要衝としての発展を促し、周辺の肥沃な農地と良好な交通網は、シルケボーやヴィボーといった周辺都市との物流を円滑にし、ラナースをデンマークにおける重要な商業都市へと成長させました。そのため、ラナースは『水路と道路が出会う場所』として知られています。

王家の都市と豊かな歴史

ラナースは、デンマーク王室と深い関わりを持つ都市でもあります。「王家のユラン（Kronjylland）」と呼ばれ、市民は「王家のユラン人（Kronjyde）」を自称します。これは、周辺に広がる広大な王室領地と、1750年頃より詩人らによって用いられ始めた呼び名に由来しています。著名な作家、ニコライ・グルントヴィク、ハンス・クリスチャン・アンデルセン、ノーベル文学賞受賞者ヘンリク・ポントピダンなどもこの名称を用いていました。


ラナースの歴史は古く、1100年代には町が形成されたとされていますが、ヴァイキング時代からの集落の存在を示す証拠も発見されています。デンマークの守護聖人である聖クヌート（クヌート4世）は、ラナースでコインを鋳造したと伝えられており、その生涯の最後もこの地で迎えています。


中世には要塞化が進められましたが、現在のラナースでは、Østervold（東防御壁）、Vestervold（西防御壁）、Lille Voldgade（小防御壁通り）といった通りの名称に、その名残りを留めるのみです。 1200年代には3度の大火に見舞われ、その中には王子アーベル（後のアーベル王）の軍によるものも含まれます。


デンマークの国民的英雄、ニールス・エッベセンもラナースにゆかりのある人物です。1340年、ホルシュタイン伯ゲルハルトを殺害し、ドイツ人に対する反乱のきっかけを作ったと伝えられており、市庁舎前には彼の像が立っています。ヴァルデマー4世の治世には、ラナースはしばしば「ラナース要塞（Randershus）」と呼ばれ、その防御は強化されましたが、後に貴族らの攻撃を受けています。1534年には農民反乱も発生しましたが、鎮圧されています。


繁栄期には、170もの商人の屋敷と大規模な海軍を擁したとされ、現在でも町並みには当時の半木造建築の面影が残されています。河港は水深が浅いものの、フィヨルド口に近いことから良質な造船所として機能し、軍事拠点としての役割も果たしていました。1880年当時の人口は約1万3千人でした。

ラナースの見どころ

歴史だけでなく、自然も豊かなラナース。北欧最大の人工多雨林であるラナース多雨林には、350種以上の植物と175種以上の動物が生息し、南アメリカ、アフリカ、アジアを模した3つのドームの中で暮らしています。ヘビ園や水族館なども併設されています。


その他、クラウスホルム城、聖モルテンス教会、エンホイ教会、ラナース文化史博物館など、歴史的建造物や博物館も見どころです。姉妹都市には、ノルウェーのオーレスン、アイスランドのアークレイリ、フィンランドのラハティ、スウェーデンのヴェステロースなどがあります。ラナースは、歴史と自然、そして文化が調和した魅力的な都市です。

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