ラハイナのバニヤン・ツリー

ラハイナのバニヤンツリー

ラハイナのバニヤンツリーは、アメリカ合衆国ハワイ州マウイ島のラハイナに位置する、巨大なベンガルボダイジュ（バニヤン）の木です。ラハイナのシンボルとして知られ、その歴史と独特な姿で多くの人々を魅了しています。1873年に植樹されて以来、150年以上にわたり成長を続け、現在はハワイ州内だけでなくアメリカ国内でも最大級のバニヤンの木とされています。

特徴

バニヤンツリーは、インド原産のベンガルボダイジュの通称で、その特徴的な成長様式で知られています。枝から気根と呼ばれる根を垂らし、それが地面に到達すると新しい幹となるため、一本の木がまるで森のように見えるのが特徴です。ラハイナのバニヤンツリーも、その例に漏れず、巨大な樹冠を広げ、多くの気根が地面に達して支柱のような役割を果たしています。

この木の樹高は約18m、樹冠の面積は約0.26ヘクタールにも及び、その巨大さは圧巻です。元々は高さ2.4mの苗木でしたが、150年以上の歳月をかけて大きく成長しました。かつては木の片側に水路があり、それが現在でも木の根の水源になっていると考えられています。また、地元の日本人コミュニティが、適切な気根に水を張った瓶を吊るすなどして、気根の成長を促したという逸話も残っています。

しかし、この木は、干ばつ、土壌の圧縮、近隣の開発など、様々なストレスにさらされています。そのため、木の下を車両が通行することは制限され、灌漑システムを導入するなど、慎重な維持管理が行われています。夕暮れ時には、インドハッカ（マイナ・バード）などの鳥が多数集まり、夜のねぐらとして利用していますが、その鳴き声が騒音になるという一面も持ち合わせています。

歴史

ラハイナのバニヤンツリーは、1873年4月24日、アメリカからのプロテスタント宣教師のハワイ到着50周年を記念して植樹されました。この木は、インドの宣教師から贈られたもので、当時ラハイナの保安官であったウィリアム・オーウェン・スミスによって植えられました。この場所はもともと「コートハウス・スクエア」と呼ばれていましたが、後にバニヤンツリーの成長と共に「バニヤン・ツリー・パーク」または「バニヤン・コート・パーク」に改名されました。この木は、ハワイで最も古いバニヤンツリーとされており、その広大な枝は、公園の大部分を覆っています。

バニヤンツリーとコミュニティ

この木は、長年にわたりラハイナのコミュニティにとって重要な存在であり続けています。1886年には、この木の下でカメハメハ3世の誕生日を祝う舞踏会が開かれたという記録もあります。大きな樹冠は、日中の強い日差しを遮る日陰を提供し、地元の人々にとって憩いの場となっています。また、ダンスパーティ、コンサート、メーデーの祝祭、政治集会、ルアウ（宴会）、小学校のフェスティバルなど、さまざまなイベントの舞台としても利用されてきました。

アロハ・フェスティバル・ウィークの開催地であり、週末には多くの露店が出店し、賑わいを見せています。2023年4月には、植樹150周年を祝う盛大なパーティーが開催されました。

2023年の大火

2023年8月初旬にマウイ島で発生した山火事で、ラハイナの町は壊滅的な被害を受け、この木もまた深刻な損傷を受けました。樹木医による徹底的な検査が行われ、気根と樹皮の下の組織に再生の兆候が見られることが確認されています。現在、給水車による散水や堆肥層の設置など、回復を促すための措置が講じられており、今後の再生が期待されています。

まとめ

ラハイナのバニヤンツリーは、その歴史的価値、独特な姿、地域社会との強い結びつきから、ラハイナの象徴として大切にされてきました。2023年の山火事という困難を乗り越え、再びその雄大な姿を見せてくれる日が来ることを多くの人が願っています。

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