ラハイナ

ラハイナ：ハワイ王国の栄光と灰

はじめに

マウイ島西部に位置するラハイナは、かつてハワイ王国の首都として栄え、捕鯨産業の中心地として繁栄した歴史を持つ町です。19世紀の面影を残す歴史的な街並みは、アメリカ合衆国国定歴史建造物地区に指定され、多くの観光客を惹きつけてきました。しかし、2023年8月に発生した大規模な山火事により、町の大部分が破壊され、その歴史と文化に大きな傷跡を残すこととなりました。本稿では、ラハイナの豊かな歴史、文化、そして災害後の現状について詳細に解説します。

ラハイナの地理と人口

ラハイナは、マウイ郡に属する国勢調査指定地域 (CDP) であり、ワイルクからは西に約18km、ホノルルからは西南西へ約130kmの位置にあります。カアナパリやカパルアなどの有名なビーチリゾートにも近接しており、観光客に人気の高いエリアです。特に繁忙期には、人口が4万人に膨れ上がることもあります。2020年の国勢調査では、ラハイナCDPの人口は約1万2702人とされています。

ラハイナの名称と歴史

ラハイナの名称は、ハワイ語で「苛烈な太陽」を意味する「Lā hainā」に由来すると言われています。これは、この地域が晴天続きで乾燥した気候であることにちなむとされています。一方で、「託宣の土地」を意味する解釈や、「犠牲の日」、「解釈の日」といった説も存在します。

古くは「レレ」と呼ばれ、パンノキが栽培されていたこの地は、ハワイ統一以前からマウイ島の王たちが好んで居住する場所でした。特にモクウラという小島は、聖地として崇められていました。18世紀末には、カメハメハ1世がハワイ諸島の統一に乗り出す際に、マウイ島征服の拠点としてラハイナに上陸しました。

ハワイ王国の首都ラハイナ

カメハメハ1世は、1810年にハワイ諸島の統一を成し遂げ、ラハイナに王宮を建設しました。「レンガの宮殿」と呼ばれた西洋風の宮殿は、その後失われてしまいましたが、1960年代に基礎が発見されました。1819年、カメハメハ1世の死後、カメハメハ2世がラハイナを拠点とし、以後1843年頃まで、ラハイナはしばしばハワイ王国の首都として機能しました。この間、キリスト教宣教師が島に初めて到着し、ハワイの首長層に大きな影響を与えました。1840年にはラハイナでハワイ王国最初の議会が開かれ、成文憲法が起草されました。しかし、1843年のポーレット事件以降、首都機能はホノルルに移され、ラハイナの地位は低下していきました。

捕鯨基地としての繁栄

1819年に最初のアメリカの捕鯨船がラハイナに到着して以降、ラハイナは捕鯨基地として大きな発展を遂げました。マウイ島とラナイ島に囲まれた「ラハイナ・ローズ」は、水深が深く、捕鯨船の停泊地として最適でした。捕鯨業の最盛期には、100隻を超える捕鯨船がラハイナに停泊していたとされています。捕鯨船の船員であったハーマン・メルヴィルは、1843年にラハイナを訪れ、その経験が後に彼の代表作『白鯨』の執筆に繋がったと言われています。しかし、1850年代後半から石油の利用が広まるにつれ、捕鯨業は衰退していきました。

サトウキビ産業と観光業

捕鯨業の衰退後、ラハイナではサトウキビ産業が発展しました。1860年に設立されたパイオニア・ミル社が、ラハイナで最初のサトウキビプランテーションを開設しました。また、ラハイナは観光地としても発展し、1901年に開設されたパイオニア・インは、2023年の大火で焼失するまでハワイ最古級のホテルとして営業していました。1962年には「ラハイナ歴史地区」がアメリカ合衆国国定歴史建造物地区に指定されました。

さまざまな民族集団

19世紀後半、マウイ島のサトウキビプランテーションには、中国、日本など様々な国の移民が従事しました。ラハイナには、中国系移民の相互扶助結社であるウォ・ヒン会館や、日本人移民によって建てられた複数の仏教寺院が残っています。これらの建造物は、ラハイナの多様な歴史と文化を物語っています。

2023年の山火事

2023年8月、マウイ島を襲った山火事は、ラハイナにも延焼し、町の大部分が破壊されました。この災害により、数百世帯が家を失い、ラハイナの歴史的建造物も多くの被害を受けました。この火災は、ラハイナの歴史と文化に深刻な影響を与え、その復興には長期にわたる努力が必要となるでしょう。

ラハイナの未来

ラハイナは、歴史と文化、そして自然の美しさに恵まれた町でした。2023年の山火事は、ラハイナに大きな打撃を与えましたが、その歴史と文化、そして人々の記憶は失われることはありません。復興への道のりは長く険しいものとなりますが、ラハイナの人々は、その歴史と文化を未来へと繋いでいくために、力を合わせて取り組んでいることでしょう。

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