ラパッロ条約 (1922年)

ラパッロ条約

ラパッロ条約は、1922年4月16日にイタリアのラパッロで、ドイツ（ヴァイマル共和政）とソビエト・ロシア（ロシア社会主義連邦ソビエト共和国）の間で締結された条約です。この条約は、ブレスト＝リトフスク条約と第一次世界大戦の結果として生じた両国間の領土と金銭に関する主張を相互に放棄することを定めました。

条約の主な内容は、両国が外交関係を正常化し、相互親善の精神に基づき経済的な必要性を解決するために協力することです。この条約は、「ラパロ条約」とも表記されることがあります。

条約成立の背景

1922年4月10日からジェノアで開催されていたジェノア会議が、この条約締結のきっかけとなりました。会議にはソビエト・ロシアの代表も招かれていましたが、戦時中の債務や革命中に国有化された外国人資産の補償問題で意見が対立し、ドイツの賠償問題についても交渉が行き詰まっていました。

このような状況の中、会議に出席していたドイツの外務大臣ヴァルター・ラーテナウとソビエト外務人民委員ゲオルギー・チチェーリンは、以前からベルリンで協議していた国交回復について、4月16日に交渉を再開し、同日にラパッロ条約に調印しました。

条約は1923年1月31日に批准書の交換が行われ、同年9月19日に国際連盟条約集に登録されました。

また、ソビエト・ロシアの影響下にあるウクライナ、白ロシア、ザカフカース連邦（グルジア、アゼルバイジャン、アルメニア）、極東の各ソビエト共和国に対するドイツの関係を明確にするため、1922年11月5日にベルリンでラパッロ条約の補足条約が調印されました。この補足条約は、1923年10月26日に批准書の交換が行われ、1924年7月18日に国際連盟条約集に登録されました。

条約の内容

ラパッロ条約によって、ドイツとソビエト・ロシアは相互の債務を相殺し、賠償請求権を放棄しました。また、両国は外交関係を再開し（ドイツがソビエト政府を承認）、通商においては最恵国待遇を適用し、経済関係を促進することに合意しました。

この条約には、軍事に関する条項は含まれていませんでした。

条約の影響

ラパッロ条約は、ヴァイマル共和政とソビエト・ロシアが国際的な孤立から脱却する上で重要な役割を果たしました。この条約は、両国間の友好の象徴となり、ヴェルサイユ体制に対抗する共同戦線を築くきっかけとなりました。

条約自体には軍事的な規定はありませんでしたが、その後の両国間の軍事協力の基礎を築いたとされています。特に、ドイツが連合国の関与なしに独自に締結した最初の条約であったことが、国際社会に大きな影響を与えました。

アメリカの外交官ジョージ・ケナンは、著書『レーニン・スターリンと西方世界』の中で、ラパッロ条約がソビエト・ロシアにとって最初の外交的勝利であり、チチェーリンの功績であると評価しました。しかし、条約の内容自体は無害であり、同盟関係を確立するものではなかったとも指摘しています。

ドイツによるソビエト・ロシアの承認は、欧米諸国に衝撃を与え、特にイギリスの首相デビッド・ロイド・ジョージは、条約締結を知って激怒しました。ロイド・ジョージはジェノア会議のドイツ代表を呼び出して問い質しましたが、ドイツ側はロイド・ジョージとの会談を何度も求めていたにもかかわらず拒否されていたと返答しました。

関連事項

ヴェルサイユ条約
独ソ不可侵条約
リペツク戦闘機学校
カーマ戦車学校
* トムカ・ガス試験場

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