ラフ・カット

ラフ・カットとは

ラフ・カット（Rough Cutt）は、1980年代のアメリカン・ヘヴィメタルシーンにおいて活動したバンドです。カリフォルニア州を拠点とし、特にLAメタル隆盛期に頭角を現しました。ドラマティックなヴォーカルと力強いギタープレイを特徴とし、短期間ながらも後世に影響を与えるミュージシャンを輩出したことで知られています。

来歴

バンドは1980年代初頭にカリフォルニア州サンディエゴで産声を上げました。結成当初は、後にオジー・オズボーン・バンドやバッドランズで活躍するギタリスト、ジェイク・E・リーが在籍しており、その後のバンドの方向性を定める上で重要な役割を果たしました。しかし、ヘヴィメタルバンドによく見られるように、結成初期からメンバーの変遷が激しく、ラインナップが固定されるまでには時間を要しました。

特に重要な転機となったのは、ギタリストのアミア・デラクが加入したことです。彼がバンドに加わった後、ラフ・カットは大手レコード会社であるワーナー・ブラザース・レコードとの契約を勝ち取り、1985年にセルフタイトルのメジャーデビューアルバム『ラフ・カット』を発表しました。このアルバムは、当時のシーンの潮流に乗る形で注目を集め、バンドの知名度を一気に高めました。翌1986年にはセカンドアルバムとなる『ウォンツ・ユー（Wants You!）』をリリースし、その活動は順調に見えました。

しかし、セカンドアルバム発表後、バンドの中心人物の一人であったリードヴォーカルのポール・ショーティノがバンドを離脱し、クワイエット・ライオットに加入するという大きな変化が訪れます。ポール・ショーティノ脱退後、元ウォリアーのヴォーカリスト、ペリモア・マッカーティが一時的に加入しましたが、バンドとしての勢いは失われ、ほどなくしてラフ・カットは一度解散することとなります。

解散後、メンバーはそれぞれの道を歩みました。ギタリストのアミア・デラクは、後にインダストリアル・メタルの分野で成功を収めるバンド、オージー（Orgy）を結成し活動を続けました。

バンドが歴史の彼方に消え去ったかに見えた1990年代半ば、1996年には1980年代のライブ音源を中心に収録したアルバム『Rough Cutt Live』がリリースされ、往年のファンを喜ばせました。そして2000年代に入ると、オリジナルメンバーであるポール・ショーティノが新たなメンバーを加えてバンドを再結成させ、散発的ながらもライブ活動を行うようになりました。以降、メンバーチェンジを繰り返しながらも、バンド名義での活動は続いています。

歴代メンバー

ラフ・カットは数多くの才能あるミュージシャンが在籍したことで知られています。特に有名なメンバーとその後の活動の一部を以下に挙げます。

ポール・ショーティノ (Paul Shortino) - リードヴォーカル。解散後、クワイエット・ライオットやキング・コブラといった著名なバンドで活動しました。
ジェイク・E・リー (Jake E. Lee) - ギター。バンド黎明期に在籍。脱退後、オジー・オズボーンのバンドに加入し、世界的ギタリストとしての地位を確立しました。
クロード・シュネル (Claude Schnell) - キーボード。初期メンバー。後にロニー・ジェイムス・ディオ率いるディオに加入しました。
クレイグ・ゴールディ (Craig Goldy) - ギター。初期に在籍。ジェフリアを経て、後にクロード・シュネルと同じくディオに加入しています。
アミア・デラク (Amir Derakh) - ギター。メジャーデビュー時のギタリスト。解散後、オージーを結成し成功しました。
ジミー・クレスポ (Jimmy Crespo) - ギター。中期以降に在籍。元エアロスミスのメンバーとしても知られています。
ショーン・マクナブ (Sean McNabb) - ベース。中期以降に在籍。クワイエット・ライオット、グレイト・ホワイト、ドッケンなど、多くのハードロック/ヘヴィメタルバンドで活動しています。

このように、ラフ・カットは多くの実力派ミュージシャンがキャリアを積む場となり、彼らが後の有名バンドで活躍する足がかりを提供した側面も持っています。

ディスコグラフィ

『ラフ・カット』 (Rough Cutt) - 1985年 (Warner Bros.)
『ウォンツ・ユー』 (Wants You! a.k.a. Rough Cutt Wants You) - 1986年 (Warner Bros.)
『Rough Cutt Live』 - 1996年 (DeRock) ※ライブアルバム
『Anthology』 - 2008年 (Deadline) ※コンピレーションアルバム
『The Fiddler Sessions '84』 - 2019年 (Deadline) ※ライブアルバム（ヴァイナル盤のみ）

ラフ・カットは、1980年代の西海岸ヘヴィメタルシーンにおいて、短いながらも確かな存在感を示したバンドです。メジャーレーベルから2枚の高品質なアルバムをリリースし、その後の音楽シーンで活躍する数多くの才能を輩出した功績は、今日においても記憶されています。

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