ラベリング理論

ラベリング理論

ラベリング理論は、社会学における「逸脱行動」に関する理論であり、1960年代にハワード・ベッカーをはじめとするシカゴ学派の研究者たちによって提唱されました。従来の逸脱論が逸脱行為を個人の属性や社会病理現象として捉えていたのに対し、ラベリング理論は「逸脱」を社会的な相互作用の結果として捉える点に特徴があります。

従来の理論との違い

従来の逸脱論では、例えば「髪を染めている＝不良」というような一方的な定義がなされ、「不良の定義は客観的に成立する」という単純な考え方がされていました。しかし、ベッカーは著書『アウトサイダーズ』において、逸脱は個人の属性ではなく、他者からのラベリング（レッテル貼り）によって生み出されると指摘しました。ここで言うネガティブなラベルは、「社会的スティグマ」と呼ばれることもあります。

従来の逸脱論が逸脱者個人に着目していたのに対し、ラベリング理論は、規則を作成し執行する側と逸脱者とされる側を対等に扱い、双方の相互作用の過程として逸脱を捉えるという視点を導入しました。

歴史

ベッカーの理論は、ロバート・K・マートンの自己成就的予言や、E・M・レマートが提唱した第二次逸脱といった概念に基づいて発展しました。ベッカーは『アウトサイダーズ』の執筆にあたり、マリファナ使用者やジャズミュージシャンへの聞き取り調査や参与観察を行い、その結果を基に理論を構築しました。この調査手法は社会学研究の手本としても高く評価されています。

ベッカーの理論は、やがて「ラベリング理論」と呼ばれるようになり、逸脱論に新たな流れをもたらしました。社会学史において重要な理論の一つとして位置づけられています。

このラベリング理論は、後にJ・I・キツセやM・B・スペクターらによって構築主義へと発展していきました。

参考文献

ハワード・ベッカー『完訳 アウトサイダーズ+ラベリング理論再考』現代人文社、2011年
Becker（1963）, Outsiders. New York: Free Press.

関連項目

犯罪学
シカゴ学派 (社会学)
犯罪社会学
構築主義
非行
ピグマリオン効果

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