シカゴ学派 (社会学)

シカゴ学派：都市社会学の隆盛と多様な貢献

シカゴ学派は、20世紀初頭からシカゴ大学を拠点として発展した社会学の学派です。1920年代以降、特に都市社会学の分野で大きな影響力を持つようになりました。実証的な研究方法を重視し、シカゴという大都市を「社会実験場」として、様々な社会問題を研究対象としてきました。その研究成果は、社会学のみならず、他の社会科学分野にも多大な影響を与えています。

第1世代：礎を築いた巨匠たち

1890年に石油王ジョン・D・ロックフェラーの巨額な資金援助により設立されたシカゴ大学。その2年後、社会学部が創設され、初代学部長に就任したアルビオン・スモールを筆頭に、社会学研究の先駆けとなる研究が開始されました。スモール、ジョージ・ヴィンセント、ウィリアム・I・トーマス、C・R・ヘンダーソンらの4名は「四巨頭」と呼ばれ、シカゴ学派の基礎を築きました。彼らは、社会問題の実証的研究を推進し、社会学における最初の「学派」を形成するに至りました。

第2世代：都市生態学の開花

第1世代の研究を受け継いだ第2世代は、シカゴ学派の黄金時代を築きました。ジャーナリスト出身のロバート・パークとアーネスト・バージェスは中心人物として活躍し、急速な都市化と移民の流入がもたらす社会問題に焦点を当てました。シカゴ市を「社会学的実験室」と捉え、多くの大学院生を指導し、都市社会学、特に都市生態学の発展に大きく貢献しました。1921年に出版されたパークとバージェスの共著『科学としての社会学入門』は「グリーンバイブル」と呼ばれ、シカゴ学派の社会学、そして後のアメリカ社会学の方向性を決定づけた重要な著作です。また、第1世代と第2世代の双方にまたがって活躍したW・I・トーマスとF・ズナニエッキによる共著『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』は、移民の社会統合過程を詳細に分析した大著として知られています。

第3世代：理論の深化と多様化

第2世代の教え子であるハーバート・ブルーマー、ルイス・ワース、E・C・ヒューズ、S・ストゥーファーらが第3世代を形成しました。ブルーマーとヒューズはシンボリック相互作用論、集合行動論、プロフェッション論の定式化に貢献しました。ワースは都市社会学の発展に貢献し、「生活様式としてのアーバニズム」という概念を提唱しました。この世代では、シカゴ学派の理論的基盤がさらに深化し、多様化していきました。

第4世代（ネオ・シカゴ学派）：新たな展開

第3世代の研究者たちは、シカゴ大学から離れて活躍する者も多く、彼らをまとめて「第4世代」あるいは「ネオ・シカゴ学派」と呼びます。この世代には、流言研究や準拠集団理論で知られるタモツ・シブタニ、ラベリング理論のH・S・ベッカー、医療社会学とグラウンデッド・セオリーで著名なアンセルム・ストラウス、ドラマツルギーで知られるアーヴィング・ゴフマンなどが含まれます。彼らはシカゴ学派の伝統を受け継ぎながらも、新たな研究分野を開拓し、現代社会学に多大な影響を与え続けました。

シカゴ学派の遺産

シカゴ学派は、都市社会学の発展に大きく貢献しただけでなく、実証的な研究方法、シンボリック相互作用論、ラベリング理論など、現代社会学の重要な概念や理論を生み出しました。その影響は、アメリカ社会学のみならず、世界中の社会学研究に及んでいます。シカゴ学派の研究成果は、現代社会の様々な問題を考える上で、今もなお重要な示唆を与えてくれます。

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