ラムエア・タービン

ラムエア・タービン (RAT) の概要

ラムエア・タービン（ram-air turbine, RAT）は、主に航空機に搭載される補助動力装置です。この装置は、特に緊急時において非常に重要な役割を果たします。主に、主エンジンや補助動力源（APU）が機能しなくなった際に、操縦系統や油圧システム、並びに計器類に必要な最低限の動力と電力を供給します。これを実現するために、小型のプロペラが機体外部に展開され、その運転によって油圧ポンプや発電機を駆動します。中には油圧システムのみを持ち、それを用いて発電を行うタイプも存在します。

動力源の特性

現代の航空機は、主にエンジンやAPUから電力や油圧を供給していますが、これらはいずれも燃料を必要とします。それに対して、ラムエア・タービンは飛行中の空気流、つまり飛行風をエネルギー源として利用します。通常、RATは機体の胴体や翼の内部に収納されていますが、非常時にはフタが開いて自動的に展開される仕組みです。この展開と同時に、作業が開始されます。

RATの種類と出力

軍用機では、動力を損失することが見込まれるため、RATは広く装備されています。ほとんどの商業旅客機にもこの装置が搭載されており、1960年代以降のモデルでは特にその傾向が見られます。ただし、小型民間機では装備されることが少ないです。たとえば、エアバスA380には直径1.63メートルの大きなプロペラが搭載されていますが、一般的な旅客機では約80センチメートルの小型プロペラが主流です。

RATの出力は、航空機のサイズや用途によって異なりますが、大型旅客機用の出力は一般的に5キロワットから70キロワットの範囲です。プロペラの枚数は通常2枚か4枚ですが、軍用機では多葉式のブレードを採用したダクテッドタイプが増えており、旅客機でも同様の例が増えてきています。また、低速で使用される小型RATでは、出力がわずか400ワットというものも存在します。

軍用機における特殊な用途

軍用機の例として、RATはM61A1型ガトリング砲（バルカン）のモーター駆動用にも用いられています。また、電波妨害システムであるAN/ALQ-99の電源としても、特別にガンポッドに収納されたRATが装備されています。これらの用途では、飛行中常に回転し続ける設計になっています。

戦歴と事例

RATの重要性は、その機能利用の具体例からも明らかです。たとえば、エア・トランザット236便の滑空事故やギムリー・グライダーのケースでは、ラムエア・タービンが民間旅客機の大惨事を未然に防ぐ助けとなりました。これらの事例は、RATがどれほど重要な安全機構であるかを示しています。航空機において、動力や電力を供給することは生存に直結するため、ラムエア・タービンの機能や必要性が再評価されることは、航空業界において大いに意義のあることでしょう。

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