ラメラ構造

ラメラ構造：肌のバリア機能を支える液晶構造

ラメラ構造は、液体と固体の中間状態である液晶の一種です。水と油が交互に層状に積み重なった構造をしており、その規則正しい配列が独特の性質を生み出します。私たちの肌の角質層にもこのラメラ構造が存在し、肌の水分を保持したり、外部からの刺激から肌を守るバリア機能を担っています。

人体のラメラ構造：角質層の細胞間脂質

人間の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分けられ、特に最表層の角質層は、外界と直接接する重要なバリアとして機能しています。

角質層は、角質細胞と細胞間脂質から成り立っています。この細胞間脂質が、水と油が交互に重なったラメラ構造を形成することで、肌の水分を保持し、外部からの刺激や水分蒸発を防ぐ役割を果たしています。細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などの脂質から構成され、セメントのように角質細胞を結びつけています。

ラメラ構造の水分保持とバリア機能

ラメラ構造は、親水性の部分（水になじみやすい部分）と疎水性の部分（油になじみやすい部分）が交互に配列することで、水を効率的に閉じ込めます。この構造により、角質層は適切な水分量を保ち、外部からの異物の侵入を防ぎ、体内の水分蒸発も抑制します。

もし、このラメラ構造が何らかの原因で破壊されると、肌のバリア機能が低下し、乾燥や肌荒れなどのトラブルにつながります。乾燥肌の場合、角質層の水分量が正常な肌（20～25％）より大幅に減少（10％以下）し、ターンオーバーの乱れも引き起こします。

ラメラ構造と化粧品開発

化粧品業界では、有効成分を肌の角質層に効率的に浸透させることが長年の課題でした。従来の化粧品は、有効成分をマイクロメートル単位で溶かしていましたが、肌の細胞はナノメートル単位であるため、浸透には限界がありました。

しかし、ナノテクノロジーの発展により、ナノカプセル化技術やナノ粒子を用いた化粧品が登場しました。これにより、有効成分の浸透性は向上しましたが、ナノ粒子単体では、肌への付着性や保湿効果が不十分な場合があります。

そこで、近年注目されているのが、細胞間脂質と類似したラメラ構造を持つ化粧品です。このタイプの化粧品は、有効成分をラメラ構造の中に閉じ込めることで、肌への浸透性、持続性、保湿力を高める効果が期待できます。

ラメラ構造化粧品の乳化技術

ラメラ構造を持つ化粧品は、水と油を混ぜ合わせる乳化技術によって作られます。この際、界面活性剤が重要な役割を果たします。界面活性剤は、親水基（水になじみやすい部分）と親油基（油になじみやすい部分）を持つ両親媒性分子で、水と油の界面張力を下げ、乳化を促進します。

乳化技術には、機械乳化法、転相乳化法、転相温度乳化法（PIT乳化）、液晶乳化法、非水乳化法など様々な方法があります。特に液晶乳化法は、界面活性剤と油分、保湿成分を特定の比率で混合することで、系全体が液晶状態になるラメラ構造を作り出す技術です。

ラメラ構造の種類と界面活性剤の安全性

ラメラ構造は、その配列や成分によって様々な種類があります。また、化粧品に使用される界面活性剤は、食品や医薬品にも用いられる安全性の高いものが多く、適切な選択と使用が重要です。

ラメラ構造化粧品は、肌のバリア機能をサポートし、乾燥や肌荒れを防ぐ効果が期待できるため、今後の化粧品開発においても重要な役割を果たしていくと考えられます。

もう一度検索